JTEFについて

これまでの歴史

トラ保護基金の歴史 -トラ支援(ロシア)

◆支援期間:1997年~2006年

犬を使った個体数調査

 絶滅の危機にあるトラの個体数調査は通常、トラがつけた足跡を測り個体識別をしてきました。しかし岩や土や砂や水場につけられた足跡を同一のものと判断するのは非常に難しく、経験のある研究者でも確実ではありません。そこで、トラ保護協会(TPS)は、訓練した犬を使いトラのフンなどから個体識別をさせています。
 ロシア極東地域のラゾ保護区で、足跡調査では22頭と発表されたトラが、犬を使った調査では10頭だったという結果が出ました。犬を使った調査は、確実であり、自動撮影装置のように高額でもなく、電波発信機のようにトラへの負荷もかからず、今後の個体数調査には役立つものと注目されていました。特に、寒冷な気候のもと生息域が限られ個体数が残り30頭といわれるアムールヒョウの調査には有効な方法といえます。
 そこで、トラ保護協会(TPS:ラゾ保護区に研究者常住)へそこで調査のために、調査のために必要な無線機、ヘッドライト、電池、広口ビンなど犬を使った調査に必要な備品などを支援しました。(支援額84万円)


パトロールレンジャー支援

2001年:
 TPSの代表セルゲイさんが、より効果的なパトロールをするため、あらたにパトロール隊を作りました。名前はタイガーボランティア。メンバーはロシア政府下のパトロール隊で活躍し取締権限を持つ捜査官3人で、法的権限を持つ警察官も協力体制にあります。

 タイガーボランティアは、まず、アムールヒョウも生息する南沿海地方のケドロバヤパジ国立公園内をパトロールする権限を与えられました。ロシアでは権力者が密猟に関わる事も多いのですが、今まで保護区レンジャーたちは見て見ぬふりをして明るみに出ませんでした。ところが、セルゲイさんたちタイガーボランティアは、大会社の社長でも知事でも、また銃で脅されてもひるむことなく摘発したのです。

タイガーボランティアへ 
車(いすゞファーゴ)、 給料(4人)、ユニフォーム、車庫代 日付が出るカメラ、ビデオカメラ(支援額132万円)
ドイツの狩猟犬、マークは、生後2か月めで早くも2件の密猟者摘発に貢献。野生の朝鮮ニンジンを取りに入った密猟者が背の高いブッシュに隠れましたが、すぐにマークに発見されました。また川でイクラを取っていた密猟者がタイガーボランティアに見つかり道具を投げ捨て「ただ泳いでいるだけ」とぬけぬけと話していましたが、マークにイクラ取りのフックが発見されました。

2002年:
 タイガーボランティア視察。保護区周辺のパトロールに同行した初日に、川で魚を取っていた密猟者発見。ここは狩猟も魚取りもカエルの捕獲も禁止ですが密漁した魚は2種で150匹でした。被害額は7000米ドル。20代のこの密猟者は2000米ドルするトヨタクラウンに乗っていました。パトロールに同行したその日に密猟者を発見するとは、いかに密猟が日常的に行われているかがわかります。
 タイガーボランティアによる取締活動の結果、ケドロバヤパジ自然保護区で 保護区レンジャーが1年間であげた検挙数を3か月で達成。65件を摘発、刑事事件として立件されました。(支援額301万円)


2003年:
 地元有力者に対しても厳しく取り締まるタイガーボランティアは、ケドロバヤパジ国立公園長からうとましく思われ、パトロールができなくなりました。そこで、沿海州南部にある海洋保護区とその周辺地帯のパトロールを始めました。ここでも無断で違法に入っていた元知事に職務質問をしたところ、殴る、蹴るの暴行をされタイガーボランティアのレンジャーが負傷し、元知事に対し訴訟を起こしています。元知事からはタイガーボランティアに1人5000ドルを支払うから訴訟を取り下げるように言ってきましたが、断、結局有罪判決となりました。
 海洋保護区で、タイガーボランティアは500人の違法立入を退去させましたがこれは25年間で初めてのことでした。この他に、39の反則行為通知。7件の刑事事件。30名の犯罪者で罰金合計$2000。23のボート押収。3000のナマコ押収。3000㎏のカニ押収。1件の違法伐採。2件の密猟。(支援額265万円)

2004年:
 2004年、沿海地方ラゾ保護区長からパトロールを頼まれ、トラの個体数が多いラゾ保護区でのパトロールを始めました。保護区レンジャーはここでも地元有力者からの賄賂などで、密猟を厳しく取り締まることができていませんでした。
 タイガーボランティアがパトロールを開始してからは、30-40%も検挙数が増加しています。最初の3か月で19件もの密猟者を摘発し、合計25000ドルの反則金を取りました。
 アカシカ、ニホンジカの密猟、違法伐採、植物の違法採集、ライフルと罠の押収で55人の違反者を摘発しました。そのうち5件(9名)は刑事事件として告発しました。
 30000ヘクタールの火事の消火活動を行いました。当時の違法行為は商業目的の組織的違法伐採の規模が拡大しています。この年の1月に違法伐採で摘発した組織のボスの息子はその地方の警察官でした。
 2003年に暴行事件を起こした元知事は有罪判決を受けました。(支援額154万円)

2005年:
 タイガーボランティアの隊員である犬のマーク、毒殺。
 7月末、いつもパトロールをしているラゾ保護区内の路上でマークが毒殺されました。使われた薬は大変毒性の強いもので即死に近い状態だったそうです。1ヶ月前に警察犬などパトロール技能を競う協議会で沿海地方で1位を取っただけに残念でなりませんでした。
 タイガーボランティアに恨みをもった密猟者の仕業に違いなく、容疑者は3人に絞られましたが、決定的な証拠がありませんでした。
 2005年1月からラゾ保護区長から契約がまだ3年残っているにもかかわらず、タイガーボランティアのパトロール範囲を保護区全体から密猟者が現れない、限られた場所のみに限定されてしまいました。そして犬のマークが毒殺。また保護区所属のやる気ある若いレンジャーが行方不明になり、殺されたのではないかと噂されていました。また、他の保護区レンジャーがタイガーボランティアのレンジャーのところへウォッカを飲みながら来て「給料が少ないから密猟せざるを得ない。じゃますれば殺す」と脅してきたこともありました。
 12月30日から2006年1月10日の年始休暇前には、TVの車に1kgの砂糖がオイルタンクに入れられていました。気付かず運転しエンジンが路上で故障したら、年末年始で人もいずマイナス30度で凍死のおそれがあります。鍵のかかるガレージに入れるのは、マークを毒殺したと思われる容疑者3人のみです。タイガーボランティアの1人のメンバーはストレスから入院。やむなくラゾから撤退することにしました。今まで警察官や政治家、地元有力者が密猟に加担することが日常のロシア沿海地方でのパトロール活動には、ストレスがあって当たり前、とセルゲイさんはよく言っていました。だから、地位がどうであろうと不正は不正として、断固闘って、悪に目をつぶってきた保護区長たちから何度も疎じられてきましたが、強い精神で困難に立ち向かってきたメンバーでした。
 でも、今回の仕打ちはひどいものです。メンバーみんな、休養が必要です。「アムールヒョウもトラもいる重要な生息地、ケドロにいずれ戻りたい」と言っているセルゲイさんですが、しばらく活動を休止せざるを得ない結果になってしまいました。(支援額 21万円)

その他の歴史を見る
>トラ支援(インド)
>トラ支援(国内)
>トラ支援(その他)
>ゾウ支援(インド)
>ゾウ支援(アフリカ)
>ゾウ支援(国内)
>過去の実績

現地パートナーリンク集リンクのお願いお問い合わせ個人情報保護方針