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トラのニュース & JTEFのコメント

BBCのカメラ、山に棲むトラの撮影に成功

マーティン・ヒックマン記BBC/PA、2010年9月20日

ベンガルトラ

ブータンで、標高13,000フィート(約4,000m)の山中を徘徊するベンガルトラ

イギリスの撮影隊が、ブータンの高山で珍しいトラの撮影に成功した。この快挙は、数を減らす一方のアジア各地のトラが互いに行き来できるようにしたいと計画している自然活動家たちに希望を与えるものだ。

BBCの自然史部門に所属するチームは、この逃げ足の速い動物を撮影しようと6週間を費やした。カメラマンのひとり、ゴードン・ブキャナン氏は、自身のレンズが捉えた粒子の荒い画像を見て泣いてしまったと告白し、「言葉もなかった。感無量だった」と語った。「今回の調査の目的はブータンに生きたトラが存在するという証拠を撮影することだった。だから、僕たちがこれまでがんばってきたのはすべて、この数秒のフィルムのためということになるね」

ドキュメンタリーチームは、このヒマラヤの王国での調査では、小さな溝や樹木にいくつもの隠しカメラをセットした。今回、海抜13,000フィート(約4,000m)の山中を徘徊しているベンガルトラが撮影されたが、これはイギリスで最も高いベンネビス山の標高の2倍以上に当たる。これだけ人里離れた場所にトラがいるということは、この世界最大のネコ、パンテラ・ティグリスが人間の介入を受けずに生き延びられるかもしれないということを意味する。トラはかつて、トルコからロシア東部まで広く生息していたが、狩猟、生息地の破壊や密猟により、1900年からその数を95パーセント減らしている。野生のまま残っているのはたった3000頭で、常に絶滅の脅威にさらされている。

遺伝子的に健全なトラの生息数を増やすために、野生生物保護協会(WCS)とパンテラ基金(Panthera Foundation)は、ブータンからビルマまで8つの国にまたがる5000マイル(約8,000km)のコリドー(生物学的回廊)を確立したいと思っている。これが実現すれば、トラたちは残されている最大規模の生息地間を自由に移動できるようになるはずだ。ブータンのトラ生息数は最も少ないほうで、成獣の数は67頭から81頭と推定されている。ブキャナン氏は、自分たちが目撃したトラは繁殖しており、山中には子トラもいると確信していると述べた。もしそうであれば、この種にも未来が開ける可能性がある。「これまでインドのトラも撮影してきたし、ロシアでも探したことがあるが、トラはどこでも重大な問題に直面しているね」と彼は付け加えた。「でもブータンは地形が険しいから、密猟者たちもトラを狩るのにはすごく苦労するだろうね」

アラン・ラビノウィッツ氏はこう言う。「トラはジャングルの生き物だと思われていますが、今回これほどの高さでも生息し、繁殖できることがわかりました。彼らにとってはより安全な生息地であると言えます。ブータンは、計画中のタイガーコリドーを1本に繋げる役割を果たすでしょう」
(翻訳協力 石原洋子)

【JTEFのコメント】
トラはどんな環境でも適応力があるので、ブータンの高山で生きていることも納得できます。人が入れないような急峻な地域だからこそ生き残っているのかもしれません。インドシナの国々を通ってコリドーでつなぎ、大保護区につなげる構想があります。ミャンマーの保護区内での開発が進んでいるというニュースも先月ありましたが、この構想を本当に実現してほしいです。でないと、トラが健全に生き残るのは難しくなります。

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