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トラのニュース & JTEFのコメント

サンサル・チャンドの後継者

Tehelka誌、2010年10月16日

更にこうかつなタイプの密猟者が新たに野生生物の密売を受け継いだ。

ジャングルブックに出てきたシア・カーンは消えゆく。もはや森に君臨することはない。これがインドの密林における新常識だ。少なくとも250頭ものトラを殺戮したといわれるもっとも非情な密猟者、デリーのサンサル・チャンドとアラーハーバード生まれのシャビール・ハッサン・ケラシが逮捕された現在でも、この事実は変わらぬままだ。他で刑務所生活を送っている密猟者は少なくとも6人、それぞれが20頭ものトラを殺した疑いをもつ。

しかし、インド北部で密猟者(ほとんどが狩猟部族出身)が多数捕えられてもトラの部位の違法取引はなくなることはない。ただ北から中央へ、南へとその拠点が移動しただけである。最近ではトラ毛皮が、ケララ、カルナータカ、タミル・ナドゥ、アンドラ・プラデシュなどから5枚、マハラシュトラから2枚、マデイヤ・プラデシュから5枚、北東部から3枚押収されている。密輸の痕跡は、その先北の国境まで続いている。なにしろトラ毛皮はインドより中国でのほうが価値が高く、一頭につき65ラークルピー(=1,178万円・2010/10/29現在のレート)もの値がつくのだ。

皮肉にも、インド政府は信頼を置いていたまさにその者達に裏切られている。ヒマチャル・プラデシュ警察は、一年間におよぶ確固たる捜査の結果、インド国境の密猟犯罪組織に、国のトップ諜報機関である調査・分析局(RAW)と軍諜報部に勤める情報提供者がいることを突き止めた。しかも彼ら自身、過去に数百ものトラ毛皮を中国に密輸した疑いがある。しかしインドとチベットの国境近くヒマチャル・プラデシュで彼らが捕まった時には、紫檀の一種であるレッドサンダーを所持していた。紫檀は、カルナータカの森林に役人を寄せ付けるイームヴィーラパン(インドの有名な山賊。184名以上を殺し、200頭以上のゾウを密猟して、2004年に警察に殺された)の、得意分野であったことを思い起こす。

ヒマチャル警察は密猟犯罪組織にRAWへの密告者が存在するのを確信した。

その手掛かりは、密猟取引の新しい立役者であるタシ・ツェリングから得たものだ。タシは、2009年11月にインド北部のマジュヌカティラからの道中捕まり、ヒマチャルの国境で口を滑らした。タシ(他、バブ、ラム・シン、タシ。テンジング、パハリの仮名を持つ)は以前サンサル・チャンドがトラ皮をチベットに運ぶのを手助けしていた。

ヒマチャル・プラデシュ州ラーハウル・スピティ県の警察本部長であるSR ラナ氏は、違反者の一人、プレム・シン(別名Chwang Dorje)がRAWの「情報源」として働いているのを確認している。ヘラ・ラル(別名Sonam Hishey)も軍情報部の「情報源」として動いている。BNS ナギ警察総監もこの取引は8月23日に見破られていたと確認している。

8月~9月の1カ月間に及ぶタイガー作戦で、野生動物犯罪監視局(WCCB)からの情報に基づき、警察は標高4,500メートルの地点、カザの国境を越えようとしていた諜報員らを紫檀を積んだトラック2台分とともに押さえた。取り調べ中、すでに一台分は密輸済みということが分かった。彼らが言うには、インドとチベットの国境で国境警備隊二人(副司令官のスクデール・シン・ラナと検査官のマンモハン・シン)に賄賂を渡して国境を越えたというのだ。警察はカザ近くのスクデブの住居から6.89ラークルピー(=124万円)もの大金を発見。プレム・シンの銀行口座に19ラークルピー(=344万円)が見つかった。実質働き口のないこの高地に居住している者がそんな大金を持っているはずがない。

市場に出せば1トンにつき50ラークルピー(=906万円)もする紫檀、150トンが押収された、とWCCBの情報元は言う。中国では、この密輸された紫檀からの抽出物が、バイアグラに似た効果のある薬を作るのに使用される。紫檀は、プレム・シンとヘラ・ラルによって密輸される前に、アンド・ラ・プラデシュから運ばれ、カザで保管されていた。、アンド・ラ・プラデシュの生物多様性評議会によれば、中国では、紫檀の抽出物である‘pterosibilin’(現地ではYerra chandanamと呼ばれる)を使って、漢方の催淫薬を作っている。

痕跡を追ったWCCBの役人は、デリーを拠点としているネパール人のラジュがレッドサンダーをアーンドラ・プラデシュから「注文」したらしいことを突きとめた。ヴィジェイと呼ばれる人物がトラックで物を運び、以前麻薬密輸にかかわったとされるナレンデールの店に運んだという。電話の傍聴によってわかったのは、ネパール人のラジュはマハーラシュトラに逃げ、ナレンデールは中国へ飛んだということだ。

トラなどのネコ科動物の皮、麻薬、レッドサンダーがチベットに密輸されたという情報は、タシから得られた。しかし、その情報だけではプレム・シンとヘラ・ラルをたんなる森林法に反した木材密輸の容疑で20日間拘束することしかできなかった。インド国境警備隊員でさえも執行猶予がつき、保釈されてしまった。

タンジン・ドルジェ(別名Khampa)は、トラ皮などをレーからチベットや中国へ密輸し、レーに巨大なホテルを建てるほどの富を得たことで有名だ。彼は紫檀の所持が発覚したが、今は仮釈放中で外にいる。法施行当局は、彼の所有物を差し押さえるために動いている。

WCCBの副長官、リナ・ミラ氏が中国訪問の際、中国側のカウンターパートとなる役人に伝えたところによると、新たな役者がネパールやチベットに多くいるらしい。タイガー作戦の間、WCCBは国境100メートルのところでネパールと共同戦線をはった。今年の前半9か月の間に、密猟者はトラ38頭を追い殺している。

国境の向こうにいる密輸業者は力と情報を持っている。「彼らの写真はないが、情報は入手済みだ。ネパールを拠点にしている3人のネパール人が特定できている。ザビヤン、モレ・リミ、 ソナム・リミだ。ザビヤンとモレ・リミは若い大富豪だ。過去、デリーに頻繁に訪れていて、5つ星ホテルに泊まっている。彼らが国際的な主要密売人だ。その他中国を拠点とするチンレイがいる。」とWCCBは言う。

ネコ科の動物を犠牲にする商売で、名をきくのもおぞましいのは、ネパール人のタシ・タシェリン(別名Tchwang)だ。インド中央捜査局(CBI)によって指名手配中で、ネパールに逃亡した。別件によりネパールで逮捕されたが、協定がないためインドに引き渡されることはない。インド野生生物トラスト(WTI)の副理事長、アショク・クマール氏によると、彼は去年9月に保釈された。

結局、トラは殺され、違法に海外へ売買される。公式の記録では、今年の前半9カ月だけでも、犠牲になったトラの数は38頭に達した。インド野生生物保護協会(WPSI)は41頭とわずかだがそれを上回る数字を発表している。そして今年9月末までに、ヒョウは134頭殺されている。「インドでこの種別の密猟犠牲頭数を見積もるには、税関当局は発覚している件数を10倍にする必要があるかもしれない。」とWSPIの役人は述べる。身震いするようなシナリオだ。 (翻訳協力 柳沢さやか)

【JTEFのコメント】
サンサル・チャンドが拡大した密猟組織は、現地警察から情報を得て活動をしていました。インドで殺されたトラはネパールを通り、中国へと運ばれます。国境をうまく通り抜けられたら、協定がないためインドに引き渡されることはありません。密売ルートもわかり、中心人物も分かっているのに、組織が大きくなったために誰かがどこかで密猟して、莫大な富を得ているのです。国境を越えた摘発を行うための国間の協定が一刻も早く制定されるよう働きかけるしかないのでしょうか。

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