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奪われた富

FOONG THIM LENG、2009年12月15日

密猟者達がマレーシアのベランとテメンゴルの森林を荒らしている。

ベラ川上流にある3,000平方キロメートルのベランーテメンゴール森林地帯に生息する野生生物が、密猟の横行で激しく失われている。

ここ数年自然保護グループにより強調されてきた密猟は、10月のイポーで開かれたベランーテメンゴールに関する統合基本計画を進める会議中に、最高に注目が集まった。

ペラのラジャ・ムダ、ラジャ・ナズリン・シャー博士は会議を開くとき、その地域での密猟問題に注目し、それは不十分な法律と効果のあがらない取締が原因であるとした。

WWF上級プログラム担当者のアメド・ザフィール氏によるとグリークージェリ高速道路に沿った森林地帯をパトロールしていた野生生物森林省とWWFの野生生物保護ユニット(WPU)のレンジャーが、1月以降10人の密猟者と102の罠を取り外したそうだ。またオラン・アスリ族の若者を含めたWPUは、高速道路の両側の森林へ続く37のアクセスポイントを発見したと、述べた。

「密猟者達に使用されたキャンプ、野牛ガウルの骨、センザンコウの鱗、何袋にも入れられた沈香、1頭のゾウの死骸、密猟者達により罠に掛けられ、殺され放置された1頭のイノシシが、高速道路から20m~100m離れたところで発見されました。また、部隊は、罠にかかっていたトラを救助しました。」と、氏は、11月初旬に森林を訪ずれた記者達に述べた。

アメド・ザフィール氏は、また、キャンプと逮捕された密猟者から米と武器の入ったいくつかの袋を押収したと答えた。
「密猟者達は武装しています。一般の登山者達が、偶然彼らのキャンプを見つけたとしたらどういう事態になるかを想像してみて下さい。」と氏は言う。

「ベラン-テメンゴール森林地帯は半島マレーシアでタマンネガラに次ぐ大きさの天然林のテメンゴールですが、それにもかかわらず、湖周辺ではロイヤルベランのみが州立公園でその他の地域は指定されていない。」と、アメド・ザフィール氏は述べた。

氏は、高速道路の南方の湖岸での伐採の増加が、木材運搬トラック用の道路を整備することになったと付け加えた。 道路は、密猟者達が車を使ってジャングルの中を容易に移動させてしまう。

「緑に覆われた多くの島は非合法活動に関与する密猟者達にやすやすと上陸され進入を許しています。」と、氏は述べた。また、密猟者達は、TNB駅近くのトロイの防波堤を使用するのが分かっていると付け加えた。

リゾート経営者のスティーブ・コング氏は、珍しい花々、ラン、薬用植物、および魚が略奪されていると答えた。
「様々な種類の網が湖の中に仕掛けられています。特に河口に。もうそれなりのサイズのケラーやトマン(魚の種類、現地の名称)はもう見ることができません。」

湖に居住しているオラン・アスリ族は密猟者達による嫌がらせを恐れ、関係当局にオラン・アスリ族は軽視されていた。
「オラン・アスリ族は、当局の複数の関係者に密猟を報告しましたが、効果はありませんでした。代わりに、彼らはトラブルメーカーとしての烙印を押されたのです。」と、オラン・アスリ族の1人が言う。

世界自然保護基金、種の保全マネージャーのルーベン・クレメンツ氏は、タマンネガラ並びにベランーテメンゴールとエンダウ・ロンピンの広大な森林はトラの保護のための重点地域であると言います。しかし、氏のチームは昨年テメンゴールで密猟の痕跡のある多くの場所を見つけました。

罠にかかったトラがグリーク内のロイヤルべラン保護区で発見されました。
「10月に右前足が罠にかかったマレートラの救出は問題の厳しさを示しています。右前脚を切断するための手術を受けた後、トラは感染と過度のストレスによりマラッカ動物園で死亡しました。 この事件は明確にベランーテメンゴール森林内で、より強い取締の必要性を示しています。」

うまくいけば、11月5日の国内生物多様性-バイオテクノロジー会議での国家トラ保護行動計画採択はトラにとってより良いことを意味するだろう。 マレーシアでは、1950年代の約3,000頭いた野生のトラが現在は推定500頭のみになってしまった。 会議の議長を務めるタンスリ・ムイディン・ヤッシン氏は、2020年までにトラの数を倍にするという計画の目標を達成するため、政府がトラを保護して、野生生物保護区を拡大するための具体的な努力をすると述べた。

一方、特に、多くの人が直接あるいは、密接に野生生物犯罪に関係しているトラの生息地周辺地域では、マレーシアトラ保護連合(MYCAT)がトラの保護について普及に努めている。

11月上旬に、マイキャットはSKフェエルダ・ローウィン・ウター、SMK ケネリンと、カンポンバンダリアングの市場と、カンポン ローウィンとグリックでこうした普及活動を行った。

「我々ボランティアは、バスやタクシー運転手、事業主や個人にアプローチし、お客に保護意識の伝達を広めてもらえるよう彼らに頼みました。罠に掛かった動物の刺激的なポスターは、残酷さと野生動物を捕獲のための罠の使用は違法であることを強調するのに使用されました。」と、MYCATプログラムコーディネータの一員であるロレッタ・アン・シェパード氏は答えた。
(翻訳協力 松村理沙)

【JTEFのコメント】
JTEFの専門家アドバイザーである川西加恵氏は、マレーシア在住で、マイキャットのプログラムマネージャーであり「タマンネガラ、トラ、プロジェクトⅡ」の主任野生動物研究員です。川西さんの話でも、マレーシアは生息地破壊が著しいうえ、密猟者による数多くの罠が発見されています。今すぐ密猟防止のパトロールと取締を強化し、生息地の拡大をしなければ、現実的に2020年までにトラの数を倍加することは非常に難しいと思います。マレーシア政府とNGOの努力に大いに期待したいところです。

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