世界のニュース

野生動物・保全問題のニュース & JTEFのコメント

富の誇示に利用されるサイ―サイがベトナム富裕層の新たなシンボルに?

Tuoi Tre オンラインニュース 2012年10月10日

南アフリカでサイのトロフィーハンティングが盛んに行われています。お客の多くはベトナムの富裕層。しかし持ち帰って自宅を飾るサイには角が無い・・・。漢方薬に使われるサイの角はいまだに需要が多く違法で販売されています。ベトナムでは特に野生動物の違法取引が横行しています。南アフリカの狩猟ツアーの現状は・・・。

メコンデルタに位置するトラビン省にあるTram Be氏の自宅には、角を失ったサイの剥製がある。
サイの角を盗まれた銀行家についてのニュースは1週間にわたり地方新聞のトップを飾ったが、単なる盗難事件で済まされることではない。

トラビン省メコンデルタ市で9月下旬、SacombankのTram Be副理事の別荘に侵入した強盗は、数十万ドル相当のサイの角を盗み出したのだが、リビングには殺害され剥製にされたサイが飾られていたという。

地元の富裕層が、富や地位を誇示するためにトラやヒョウ、そして今回発見されたサイのような野生動物で自宅のリビングを飾り立てているというのだ。

絶滅危惧種の国際取引を監視するベトナムのワシントン条約担当部局を取材したTuoi Treによると、南アフリカからのサイの輸入を許可されているベトナム国民は100名を超えるという。

サイを輸入している人物について、ベトナムのワシントン条約担当部局は氏名の公表を禁止されているが、同事務局次長が火曜日にTuoi Treに語ったところによると、これらの人物は「間違いなく富裕層である」という。

複数のツアー会社が、狩猟をセットにした南アフリカでのツアーを提供している。これらのツアー会社のホームページでは、シロサイを狩猟するパッケージツアーが55,000 USドル~150,000USドル(4,371,400円~11,922,000円/11月12日現在)で販売されている。
クロサイの狩猟ツアーはさらに高額で、250,000 USドル~350,000USドル(19,860,000円~27,804,000円/11月12日現在)で販売されている。狩りをするにはライセンスも必要となり、さらに1,000USドル(79,440円/11月12日現在)を支払わなければならない。
死んだ南アフリカのシロサイをTram Be氏に贈ったとされるNgo Thanh Nhan氏はTuoi Treに対し、2006年に狩猟ツアーに参加し、同氏が3発の弾丸で仕留めたという「戦利品」のために狩猟および輸入のライセンスを取得したと述べた。
Nhan氏はこのツアーに費やした金額については答えなかったが、南アフリカのある企業から招待を受けたことだけは明かした。

一方で、ベトナムのワシントン条約担当部局のTung氏がTuoi Treに語ったところによると、南アフリカでライセンスを取得し世界各地でサイ狩りをしているのは、そのほとんどがベトナム人だという。
さらに税関当局によれば、ベトナムは野生生物や絶滅危惧種の違法取引で稼ぐのにうってつけの市場なのだという。
2006年から現在までに、警察はアフリカから持ち込まれたサイの角に関する11件の密売と、国内市場での4件の違法取引を摘発した。 過去6年間に10~30頭分のサイの剥製が、許可を得てベトナムに輸入されている。サイやその角を輸入する理由について、単に自宅に持ち帰るか土産として贈るためだと答えた人がほとんどだった。税関当局に販売目的での輸入申告をした人は1人もおらず、事情聴取することも難しい。

ベトナムでは絶滅危惧種の殺害や取引防止に徐々に力を入れ始め、サイを狩って持ち帰る許可を得ているベトナム人が多数いるという事態に、自然保護活動家らは憤慨している。

多くのボランティアグループが、飲食店に対し野生動物の肉を提供しないよう呼びかけているが、一方で一番厄介な問題となっているのが、絶滅危惧種を売買する人々ではなく消費する人々である。

「サイの狩猟が全面的に許可されているとしても、なぜ殺さなければならないのか、ずっと不思議に思っています。何のために?自身の富や権力、社会的地位を誇示するためでしょうか?」と、野生生物保全のボランティア活動に取り組んでいる3年生のNguyen Vo Mai KhanhはTuoi Treの中で述べている。

KhanhがTuoi Treに語ったところによると、絶滅危惧種の肉を提供するレストランに対しては強制捜査や罰則の適用が実施されるが、隠れて自宅にサイやトラを飾っている人達が当局に発見されることはないという。

Tram Be氏の事件を含め、どれだけの数の富裕層が自宅に野生動物を所持しているのだろうか?そして、剥製にされた哀れな動物たちは違法に殺害され取引されたのだろうか?

残念なことだが、少なくとも私にはその答えが分からないままだ。
【翻訳協力】松村理沙

【JTEFのコメント 2012年11月】

南アフリカでは今年500頭以上のサイが殺されたとの報告があります。11月8日にはハノイで7本のサイの角が押収されたニュースが入ってきました。このニュースによると、この合計重量23.5kgのサイ角は400万円位の価値があるそうです。
 南アフリカ共和国でベトナム人ハンターの狩猟許可申請が多いのは、トロフィー(記念品)として自家用に持ち帰れる(ワシントン条約上の例外)サイの頭が、実は角目的で転売されるためと言われています。漢方生薬とされたり、サイ角の粉末をいれたカクテルが人気だといいます。南ア政府はベトナム国籍の申請者に対する狩猟許可を一時停止し、ベトナム政府に対し、これまでベトナム人が自国へ持ち帰ったサイのトロフィーを今も保有しているかどうか確認するよう求めましたが、ベトナムは未だ応じていません。




現地パートナーリンク集リンクのお願いお問い合わせ個人情報保護方針