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象牙を違法に取引した日本最大の象牙業者に対して、判決が下されました
(東京地方裁判所)

■判決で言い渡された刑罰

 ○象牙を買い取った日本最大の象牙業者(象牙印章(はんこ)の製造)
   タカイチ元会長 K.高市: 懲役1年  執行猶予3年 象牙58本没収
   タカイチ 社長 M.高市: 懲役10月 執行猶予2年
   株式会社タカイチ: 罰金100万円

 ○象牙をタカイチに販売した業者
   古美術商Ka: 懲役6月 執行猶予2年
    (7本の無登録象牙(約170万円)をタカイチに販売)
   古美術商Ki: 懲役6月 執行猶予3年
    (11本の無登録象牙(約230万円)をタカイチに販売)
   象牙業者Ko: 懲役6月 執行猶予2年
    (7本の無登録象牙(約270万円)をタカイチに販売)
   古美術商Ur: 懲役6月 執行猶予3年
   Urが経営する古美術輸入販売会社Ur(美術館も運営): 罰金50万円
    (25本の無登録象牙(約1040万円)をタカイチに販売)

■判決の意味
  公判に登場した被告人の全員が、罰金ではなく、懲役刑を科されました。
  これは、象牙の違法取引は重い罪だという裁判所のメッセージです。

密猟された象牙 主犯のタカイチ元会長が執行猶予でよいのか(*1)、という疑問はあります。しかし、公判に登場した被告人のすべてに懲役刑が科された(*2)ことには意味があります。
 被告人の何人かは、事実がばれても「罰金程度」、「交通違反のようなもの」と思っていた、タカイチ元会長からそう言われたと供述していました。ある被告人の弁護人は、この程度の違法行為に対しては罰金が適切とまで主張しました。
 そのような甘い認識が通用しないことが、この裁判で明らかになったのです。

 *1:執行猶予が付けば、すぐ刑務所に行くことはありませんが、期間中に他の罪で刑に処せられると、猶予が取り消されて刑務所に行くことになります。罰金に処せられるだけでも猶予を取り消されることがあります。
 *2:公判に登場しない一部の被告人には略式罰金を科されていると推測されます。なお、会社はもともと懲役を科すことができないので、罰金となっています。

 

■裁判にあらわれた問題点
 被告人たちは、本当に反省しているのでしょうか?

密猟されたアフリカゾウ タカイチに無登録象牙を売り渡した象牙業者は、法廷で次のように話していました。
「自分がライフルを使ってゾウを撃っているわけではない。過去輸入したものを不要だからと売りに来る人がいて、それを正々堂々と買って、仕事をしているだけだ。それが法律で規制されているというのが残念だ。」

 タカイチの元会長K.高市氏にいたっては、次のように訴える始末でした。
「登録制度を作るに当たり、通産省、環境庁の協議会に多少は参加したが、自分はそもそもあの法律には反対だった。しかし、行政が押し切った。」
「CITES(ワシントン条約)の締約国会議で、毎回保護団体が圧力をかけて、取引再開をほとんど否決させていることが悪い。」

    

今回の事件は、象牙業界の最大手、リーダーによる犯罪でした。最大手、リーダーが違法取引をする業界が製造し、販売する象牙のハンコ。ワシントン条約に違反していないと信じることができるでしょうか?

 ある象牙業者は、裁判に出された証拠の中で、「(タカイチ元会長は)日本象牙美術工芸品組合連合会の会長、副会長も務め、登録制度を作る通産省、環境庁の協議会にも参加していた人物。業界の最大手、リーダー。登録制度は、象牙取引の透明性を高めるための制度であり、今回の事件は我が国の制度の信用を失わせるもの」と述べていました。

 

経済産業省、環境省は、合法な象牙から作られたものだけが販売されるよう、きちんと流通管理されていると広報してきました。しかし、実際そうだと信じることができるでしょうか?

 象牙の流通管理は、違法な象牙が製品の流通に紛れ込むのを防ぐためのものです。それがきちんと行なわれないと、密猟で殺されたゾウの牙から印章(はんこ)が作られ、堂々と店頭に出回ることになります。

 タカイチは、過去の在庫や、1999年と2009年にワシントン条約で例外的に輸入が許可されて合法的に入手した象牙からはんこを製造しています。その一方、古美術輸入販売会社Urだけからでも、2005年から2010年までの5年間で500~1000本(5億円)もの無登録象牙を買い取った余罪があることも法廷で指摘されました。つまり、「合法な象牙」と「違法な象牙」の両方を使って象牙のはんこを作ってきたのです。これでは、一般に売られている象牙のはんこが「違法な象牙」から作られているかもしれないと疑われても仕方がありません。

 この数年、世界の各地で大量に違法な象牙が押収されています。その量は、1つの事件で何トンにも及ぶことが珍しくありません。1トンの密猟象牙は150頭以上のゾウの死を意味します。

 ゾウを絶滅させない、これ以上殺させないためには、店頭で売られている象牙のはんこすべての合法性に厳しい目を向けるべきではないでしょうか。

(JTEF事務局長 坂元雅行,弁護士)



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