インドネシアで「トラ保護実績評価会議」が開催

300 300 Japan Tiger Elephant Organization

7月25,26日にインドネシアで「トラ保護実績評価会議」が開かれます。2010年寅年にロシアで開かれた世界トラ保護会議「トラサミット」でトラの個体数を次の寅年(2022年)までに倍増させる首脳宣言が出されるとともに、各生息国がトラ回復計画を立案しましたが、その実績を評価するのが今回の会議です。
現在のところ、インドやロシアなど一部の生息国では保護区を拡大するなどトラの保全にそれなりの効果を上げていますが、かつては14か国あったトラの生息国が、北朝鮮、カンボジアでは絶滅、中国、ラオス、ベトナムでは絶滅宣言を待つばかりです。今回のインドネシアでの会議では、トラの再導入の報告もなされます。カンボジアへ導入されるベンガルトラや、かつてカスピ海周辺を今では絶滅してしまった亜種のカスピトラが闊歩していたとされるカザフスタンにアムールトラを導入する話もどこまで進んでいるのでしょう。ロシアでは親が密猟された子トラを飼育し野生復帰していますが、こういう子トラを放すのでしょうか。カザフスタンでもカンボジアでも、野生のシカやイノシシなどトラの獲物動物が十分いなければ、また密猟対策や山火事などへの対策がきちんと作動していなければ、トラだけを放しても無駄死にさせてしまうことになりかねません。
トラが少なくなってきたから、今では虎骨の代用品としてライオンの骨が狙われるようになり、ライオンも数を激減させています。漢方薬に使われる虎骨だけでなく、トラの持つ強さと気高いイメージから爪や歯がお守りとしてインドシナ半島ではブラックマーケットが存在し、ネットショップでも根強い人気があります。
次の寅年まであと5年。どこまでトラたちの立場に立って各国が保全対策を立てられるのか、7月の会議を見守りたいと思います。

 

JTEFの新しい支援地、ティペシュワール野生生物保護区 in マハラシュトラ州 トラとの共存を目指して

今まで10年以上JTEFが支援してきた中央インドマハラシュトラ州のナグジラ・ナワゴン・トラ保護区の南にあります。中央インドは「トラ天国」ともいわれ、地球上にいる野生のトラ3500頭の半数以上が暮らすインドのトラ個体数の20%以上が生息しています。カーナ、サツプラ、ペンチ、メルガート、タドバ等いくつかの保護地域を含む熱帯落葉樹林帯とトラの移動に不可欠な森林コリドーがトラを育んでいるのです。支援を始めたティペシュワール保護区の広さはわずか148.6平方㎞(大体川崎市と同面積)ですが、さまざまな植物相が、多くの魚類、30種の哺乳類、渡り鳥を含む160種の鳥類、26種の爬虫類、4種の両生類、無数の昆虫を支えています。
以前、この森林はタドバ・トラ保護区とテレンガナ州にあるカワル・トラ保護区を結ぶ大切なコリドーとしてトラが移動していると考えられていましたが、今日ではこの保護区に定住するトラも確認されています。現在、森林局の調査では保護区を含めいくつかの森林の断片を含む地域に、12頭の成獣と18頭の子トラが生息しているそうです(下図参照)。

トラの個体数増加は大変喜ばしいことではありますが、保護区管理がきちんとできていない場合、村人とトラとの軋轢が起こることになります。このティペシュワール野生生物保護区でも、人との軋轢が高まって、わずか15か月で人間が7名、家畜が44頭も被害にあいました
(下図の黄丸が家畜の捕殺、赤丸が人の死亡事故の発生場所)。

 

<罠にかかったトラ写真>

 

●JTEFとWTIの取り組み
そこで、JTEFはインドのパートナー、インド野生生物トラスト(WTI)と共にこの保護区のテコ入れを開始しました。主な活動は以下の通りです。
1.住民参加の軋轢対応チーム(Priority Response Team)の結成

人々が野生生物の保全に関心を持つには軋轢を緩和する活動に関わることが重要です。JTEFとWTIは名誉保護区長であるラムザン・ビラニ博士と共に12の軋轢が起きやすい村の住民と定期的に会合を開き、地域社会の関わり方や軋轢予防のための重要な戦略会議をもちました。村の若者たちはこれ以上トラとの軋轢が起きないよう、パトロールを開始し、このことが彼ら自身でこのティペシュワールを守る責任感を持つ第一歩となりました。森林内に暮らす部族のコミュニティも主要な利害関係者の1つであるため、彼らの生活水準を上げるための措置も取られました。
このチームの目標はまず、トラやヒョウ、ナマケグマによる人への脅威を軽減し、そして人との軋轢により野生生物の死亡率を下げることです。

<定期的会合の様子>

WTIのビダルバ・トラ保護プロジェクトメンバーはPRTの役割、義務、モニタリングに関して、WTIの獣医師、野生生物学者はトラの生態、動物の行動、および有毒なヘビの基本的な予防措置について話しました。

2.森林局の最前線森林スタッフのサポートFrontline Forest Staff Training
15か月間に7人の被害者と44頭の牛がトラにやられたことで、人々の間に森林局への不安が拡大しているため、JTEFとWTIは新しいパトロール活動チームを組織し、問題のあるトラを追跡するなど活動を強化しました。多くの職員が新しく任命され軋轢問題に関わることになりましたが、野生生物局の職員は緊急事態に対処するために必要な技術的、財政的基盤が不足していたので、ティペシュワール名誉保護区長と協力し、野生生物犯罪捜査、インドの野生生物法、生態学的モニタリング、動物救護活動技術などのトピックに焦点をあてた2日間のトレーニングワークショップを開催しました。WTIチームの生物学者は自動撮影カメラの使用や、トラの足跡を測定する技術、他の動物のサインなど集中的な講義を行い、WTIの獣医は動物を捕獲する際のポイントを伝えました。

3.開発の規制
マハラシュトラ州政府森林局は、WTIの提言を踏まえて、ラムザン・ビラニ博士を含む専門家集団を構成し、保護地域の近くの灌漑用水路の建設によるトラの生息地の分断を緩和するための包括的な計画を策定するとともに、生態学的に配慮を要する区域を定め、その中では石の粉砕、製材工場、鉱業など全ての汚染源を閉鎖または規制して、野生動物の生息環境の安全を図ることになりました。
4.自然ガイドトレーニング Nature Guide Training
地域住民を含めた自然保護のアプローチとして、地元のコミュニティが野生動物の保護による観光利益を得ることも重要な取り組みです。
トラ個体数が増えたため、多くの観光客がこの辺鄙な保護区を訪れています。そこで、州の森林局が任命した自然ガイドに、ただトラや他の動物を観光客に見せることが仕事ではなく、保全も重要と教育しました。これらのガイドの多くは保護地域に近い地元の村から来ており、野生生物保全の重要なステークホルダーになっています。村人を自然ガイドとして採用することは、彼らに所属感を与え、この保護区に誇りを持ち、今までとは別の生計の立て方を提供します。

3月末、エコツーリズムの質を高め生計に役立てることを目指し、ガイドのための2日間トレーニングワークショップを開催しました。32人のガイドが、保全、生態学の知識を向上させるために参加しました。このワークショップを受けると、より多くの収入を生み出す可能性があり、観光客もガイドを通して生物多様性を知り意識を広げる一助になります。WTIのチームメンバーは、動物の痕跡、保護地域の重要性、地域社会にどう役立てるかをフィールドで確認しました。JTEFから参加者全員にリュックサック、Tシャツ、水筒、キャップ、靴を含むフィールドキットが提供され、士気が高まりました。
今まで自信が無かったガイドたちは「このワークショップを受け、たとえトラが見られなかったとしても、今回学んだティペシュワールの歴史や生態学で観光客を魅了させることができます。」とトレーニングを高く評価し、キットに非常に満足していました。

●寄付のお願い トラと共に暮らす地元若者へ 環境教育費用 (目標20万円)
あまりに軋轢が多かったため、地域住民が心からトラとの共存を考えるようになるには、まだ数年はかかるでしょう。しかし若者には正しい知識を持って、早くトラとの共存を目指してもらいたい。日本からの応援を伝えたいです!

Leave a Reply

Your email address will not be published.