活動紹介

トラ保護基金 ―絶滅の危機からトラを守るために―

中央インド・トラ保全プロジェクト

【プロジェクトの背景】

  野生のトラのおよそ半数はインドに生息しています。そのインドの中でも「トラの国」と呼ばれるのが中央インド。ここには、トラが長期にわたって生き延びるために必要な獲物となる動物が豊かで、広く連続している森があります。
 ところが、ここでも人の活動によって森が切れ切れにされ、さらにトラやその獲物となる有蹄類(野生のウシやシカなどの仲間)が密猟によって殺される事態がますます深刻になっています。
 このプロジェクトは、トラにとってもっとも大切な森のある地域で、トラの未来を「つなぐ」ために森を「つなぐ」活動を行います。

 カーナ・トラ保護区とペンチ・トラ保護区の周辺は、インドの中でももっともトラが健全に繁殖しているところのひとつといわれています。獲物となる動物も豊かです。ここでトラが生まれ育ち、故郷を離れてより広い森に巣立っていければ、トラの未来は明るいものになります。幸運なことに、カーナ・ペンチの南側には、ナグジラ野生生物保護区とナワゴン国立公園から、インドラバチ・トラ保護区、タドバ・トラ保護区に至る広大な森が広がっています。北の「カーナ・ペンチ」の森と、南の「ナワゴン・インドラバチ」の森をあわせると日本の面積の1.3倍もの広さになります。これらが一つながりの獲物が豊かな森になれば、若いトラたちが自由に住み広がって、次々に子孫を残していけるでしょう。そうなったとき、これらの森は「世界で最高のトラ保護地域」になるといわれているのです。

  ナグジラ野生生物保護区とナワゴン国立公園は、南北2つの森林地帯のまさに接点に位置します。トラ保護基金がめざすのは、この2つの保護区内とその間の森が「渡り廊下=コリドー」の役割を果たし、南北2つのまとまりのある森林地帯を、トラが自由に行き来できるようにすることです。

 「コリドー」としてもっとも重要なものは、トラが長年移動に使い続けてきた自然の森です。多少細長くて人の占拠する土地を縫うように伸びるような形でも、完全につながってはいない森が「飛び石」状に続いている状態でも、トラの「渡り廊下=コリドー」の役割ははたせます。ただし、餌となる動物がある程度豊かであることや人の活動による妨げが少ないことが条件です。そのための対策として次のことが柱になります。
・トラの生息地である森林のつながりを分断しない。
・トラと、その獲物となる動物の密猟を防止する。
・地域住民による森林への負荷を減らす。

【プロジェクトの内容】

 トラが南北2つのまとまりのある森林地帯内あるいはその間を行き来できるようにするため、次の活動を行います。

1.トラの生息環境を悪化させる開発の防止など
 現在、中央インドの保護地域の間を走る国道の拡幅工事計画が進められています。道路幅が広がってしまうと交通量も増え、トラやその獲物となる動物たちが安心して渡ることが難しくなります。そうなれば生息地の分断はますます進むでしょう。悪影響を最小限にする計画変更が必要です。そのために、科学的調査結果などをもって政府関係者へはたらきかけたり、裁判を起こして計画の修正を求めるなどの活動を行います。

2.森林レンジャーのトレーニング、パトロール用装備の支給
  トラやその獲物となる動物の密猟は大きな脅威です。そこで、ナグジラ野生生物保護区とナワゴン国立公園で働く森林レンジャー向けに、より効果的なパトロールのためのトレーニング・ワークショップを開き、ジャケット、専用ザックに入った寝袋、懐中電灯などのパトロール用装備品を一人一人に支給します。
 また、この地域には電気が通じていませんし、摂氏45度以上にもなる夏には水の確保も大変です。そこで、状況に応じた装備の要請にも応じることにしています。


3.トラの生息する森を守るコミュニティー・プロジェクト
  コリドー周辺には9万人の人々が住んでいます。日常的に大量の家畜を森の中に入れ草を食べさせるのですが、トラの獲物になるシカやウシの仲間が食べる下草の豊かさが失われつつあります。燃料木を得るための行き過ぎた伐採も森の健全さを失わせます。
 そこで、集落の住人たちの生活のニーズを聴き取るなど社会学的調査を実施した上で、生活レベルを改善する方法を見つけ、その代わり森林への負荷を減らしてもらう「地域主導プロジェクト」(コミュニティー・プロジェクト)を実施します。いたずらに規模を大きくせず、それぞれの集落の事情にそくしたものにすることがポイントです。

4.コリドーを含めたトラ保護区を指定するよう、関係機関へはたらきかけ
 現在、ナグジラ野生生物保護区とナワゴン国立公園を含む「トラ保護区」が指定される見通しとなっています。ただし、ナグジラ、ナワゴンの間を40kmにわたってコリドー状につなぐ森林(約400平方キロメートル)が「トラ保護区」に含まれることになるかどうかは微妙な情勢です。
 1~3の活動を後押しするためにも、インド中央政府、マハラシュトラ州政府に対し、コリドーを含めたトラ保護区を指定するようはたらきかけていきます。


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