野生生物保全についての考え方

野生生物保全とは、何をすることなのか?

野生生物保全の戦略的実施

 保全措置のメニュー(脅威の除去、人為的な積極介入)は、絶滅危惧種の状況に応じた、目標に向かう筋道を描いて、つまり戦略的に実施されるのでなければ、実効性は望めません。この戦略を立てる際には、次の要素に留意する必要があります。
 第1は、科学的方法論の追求です。確かに、過去の事例に現れた経験的情報は重要です。しかし、それぞれの保全措置が本当に効果的かどうかを確かめるには、科学的な評価に基づいて、その裏付けを明らかにすることが有効です。また、このような過程をくり返すことで、保全措置は将来に向けて進歩を重ねることができます。
 第2は、時間的、空間的スケールの設定です。進化プロセスを確保することを究極的な目標とすれば、長期的、広域的な措置を視野に入れなければなりません。その一方で現実的に行動を起こしていくことを考えれば、段階を踏んだ対応をとっていくことが必要となります。そこで、時間的スケールについては、「長期の目標+とりくみ事項」、「5~10年の中期を念頭に置いた達成目標+とりくみ事項」、「比較的短い期間を単位とする具体的活動」を区別して設定する必要があります。空間的スケールについては、計画対象となる絶滅危惧種の歴史的変遷も含めた分布を前提に、対処の範囲を段階的に設定する必要があります。
 第3は、総合性の確保である。絶滅危惧種に対するそれぞれの脅威に応じて必要と考えられるあらゆる保全措置(基本的措置である脅威の除去と、例外的措置である人為的な積極介入)が網羅され、コーディネートされなければなりません。その際、各保全措置の効果を基本的な考慮要素としつつ、リソース(知識、技術、予算など)が無限に得られるのでない限り、その限界も考慮した優先度設定が必要となります。
 第4に、順応性の確保です。絶滅危惧種の生物学的状況には不確定な部分が多い場合がほとんどです。したがって、どのような脅威が、どの程度の強さで、どのように複合して及んでいるかが一見明らかではない場合が少なくありません。潜在的な脅威を推測できる場合でも、顕在している要因と潜在的な要因との関係は明らかでないことも多いでしょう。緊急的な保全対策をとるだけでなく、長期的な保全を図るためには、最高・最新の科学的情報・分析手法を用いた生物学的状況のモニタリングと、その結果に基づく順応的対応のプロセスが計画に組み込まれる必要があります。
 第5に、実施可能性の確保である。計画を効果的に実施していくためには、絶滅危惧種に対する脅威に関係する立場の人や、保全措置の効果的実施に関係する立場の人等、ステークホルダーの役割を計画に組み込み、必要な知識、技術および権限を結集することが重要です。また、計画実施の効果測定と見直しのプロセスを定めることなども必要となります。

(坂元雅行)


現地パートナーリンク集リンクのお願いお問い合わせ個人情報保護方針