インド、世界銀行からのトラ保護計画に関わる財政的支援を拒否

ニューデリー Arti Dhar 2010年1月7日

 環境・森林省は水曜日、トラ保護計画を進めるにあたり、世界銀行からの財政的支援は受けないという決定を下した。

 この決定は環境・森林大臣ジェイラム・ラメシュ氏が議長を勤めた国家トラ保護局会議で下された。

 ラメシュ氏は当初援助を受ける事を奨励していたが、保護団体は反対していた。
「個人的には、世界銀行の財政的支援を非常に歓迎していました、少なくともトラ生息地周辺の村人達の生計を確保し、彼らが元の居住区であるトラ生息地に戻らないようにする事が出来ます。しかし、野生生物の専門家や保護団体が敬遠した為、考えを改めたのです。一言で言えば、世界銀行からの支援は受けないという事です」ラメシュ氏は地元で開かれたある式典でレポーター達にこう述べた。

 財政支援は生活保障を改善する必要があるいくつかの州の為に使われる事になっていた。今回の決定に関し、ラメシュ氏からの具体的な説明はなかったが、会議の出席者達により世界銀行が実施している生息地における「エコ開発プロジェクト」の『実態』が語られた。

 世界銀行は全ての契約は米国のコンサルタントを通すという条件付きで支援を行っている、ビットゥ・サーガル氏は言う。
「肉食動物を食べつくしてしまうようなアメリカ人に何の助言が出来るというのでしょうか」彼はけげんそうに言った。「開発プロジェクトに関してはあまり良い結果は出ていません」

 世界銀行が過去に実施した保護プログラムでは人々の信頼を得る事は出来なかった。彼らのエコ・開発プロジェクトはトラ生息地にかえって悪影響を及ぼしてきたからだ。トラの専門家ベリンダ・ライト氏は断言した。

「信頼できない」

 「我々のトラ保護プロジェクトに世界銀行を関与させてはなりません。援助がなくとも資金と支援は十分に得られます。銀行絡みではあまり良い経験はしていません。」ある政府高官は言う。

 「なぜ世界銀行の支援が必要なのでしょうか? 彼らは自然保護を唱えつつ、我々の天然資源を破壊するダムや鉱山の開発プロジェクトの支援も行っているのです。」保護活動家で元プロジェクト・タイガーのディレクターP.K.セン氏は疑問をなげかけた。

(翻訳協力:藤原レーシウ 志保)

【JTEFのコメント】
トラの保護のためには、まず財政支援が必要です。また世界銀行は近年(インドだけでなく)トラの保護のために積極的な姿勢を示しており、歓迎すべき点もあります。しかし現地でトラ保護活動に日々関わっている人たちから見ると、トラの保護のために支援してくれても人間にとって都合がいいように使われてしまうなら逆効果だと思ったのでしょう。背景には世界銀行がこれまでナルマダダムの建設などで大規模な環境破壊をもたらしてきたことや、融資がアメリカの大きな影響下にあることへの反発もあるようです。非常に難しい選択だと思いますが、インドが専門家やNGOの意見を聞いたうえで決定したということが重要だと思います。