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ザンビアとタンザニアが象牙の合法取引を要望

2009年11月

 ザンビアとタンザニアは、象牙の合法取引を可能にするために、自国のアフリカゾウ個体群をワシントン条約の附属書Ⅰから附属書Ⅱに格下げする提案を行っている。 この提案は、来年早々カタールで開かれるワシントン条約締約国会議において議論される予定であるが、自国のゾウの格付けを危険度のより低い区分に変更して、両国政府が保有する在庫象牙の1回限りの取引許可が出せるようにするものだ。 この提案について、公文書を読んだと言うタンザニアの新聞The Citizenが詳細を報じている。

 新聞で伝えられたタンザニアの情報筋によれば、この提案を可決することが、タンザニア政府の野生生物保護基金への財政支援を強化し、国内の密猟や他の違法活動をさらに厳しく取り締るために是非とも必要だという。 一方、ケニアは、来年の締約国会議に先立って、ナミビアおよびジンバブエからの象牙彫刻品の合法的輸出を禁止することを含む提案を既に行っており、象牙取引を解禁しようとする他国の試みはいかなるものも阻止する構えのようだ。象牙取引がケニアのゾウ個体群におよぼす影響についてはGreen Inc.上で既に報告されている。

 絶滅の危機にある動植物の取引を監視する機関TRAFFICの事務局長スディーブン・ブロード氏は、声明の中で「ケニア主導の提案とタンザニア・ザンビアの提案は目的が相反するものなので、緊張が生じて溝が深まるのは必至です」と、述べた。 ブロード氏はさらに、「自然保護への利益を最優先する満足のいく結論が得られ、違法象牙の国内市場に対する規制の欠如といったゾウの密猟を引き起こしている主要な問題から議論が反れないように願っています」と、述べた。

 他の自然保護団体も懸念を表明している。 国際動物福祉基金(International Fund for Animal Welfare)のスポークスマンジェームズ・キニー氏は、e‐メール上で次のように述べた。「タンザニアとザンビアにゾウの格下げを許せば、彼らの国だけでなく、アフリカ大陸全体で密猟者の手にかかって殺されるゾウが増えることになります。タンザニアは、明らかに、自国内での象牙の密猟を取り締ることができていません。ゾウの堵殺を合法化すれば問題は解決するどころか、もっと大きくなります。ワシントン条約でアフリカゾウの附属書掲載を格下げすることによって、タンザニアとザンビアは、アフリカ大陸全土でこれから始まる象牙獲得のための大殺戮の舞台を準備しているということです。」

 国際動物福祉基金の推定によると、1日100頭以上のゾウが密猟者に殺されており、アフリカゾウはアフリカ大陸の多くのところで15年以内に絶滅する可能性があるという。

 今年タンザニアでは、象牙の密輸事件が多数報告されている。象牙の需要は東アジアで大きい。 TRAFFICの報告によると、象牙は、1キロ当たり最高1500ドルで売買されている。
(翻訳協力 松崎由美子)

【JTEFのコメント】

 2008年、中国と日本が行った象牙の正規輸入以来、象牙の密輸が急増しています。密輸象牙の相当な部分がタンザニア由来だといわれています。2002年にシンガポールで押収された大量の象牙はザンビアから輸出されたものでした。2010年3月にドーハ(カタール)で開催されるワシントン条約第15回締約国会議で、もしタンザニアやザンビアからの象牙輸出が合法化されるようなことがあれば、それを隠れ蓑にしてますます象牙密輸がはびこることになるでしょう。JTEFはそのような提案に強く反対します。


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