世界のニュース

ゾウのニュース & JTEFのコメント

ゾウとマグロの政治的意味合いの違い

Joshua Keating、Foreign Policy編集者のブログ Passportより、2010年03月22日

 記事ですでに伝わっているように、タンザニアとザンビアは、3月22日今日、ドーハで開かれた「絶滅のおそれのある種の国際取引に関する会議(ワシントン条約会議)」において、象牙売買の国際的禁止令を緩和するよう働きかけて、あっさり拒絶された。この決定に、環境保護関係者は、今週初めのいくつかの敗北の後で、歓喜した。

 決定は環境保護関係者にとって、めったにない勝利であった。会議の開かれたこの2週間というもの、大西洋マグロの輸出禁止からサメの保護計画や赤サンゴと桃色サンゴの取引規制にいたるまで、提出した提案は敗北し、環境保護関係者はそれに耐えてきたのである。 わたしは、象牙を手に入れるためにゾウを殺すことを容認するわけではないが、ここに表れた商売における経済的不公平は、困ったものだと思われる。たとえば、マグロの禁輸は、日本が強硬に反対したものだが、日本は世界のクロマグロの80%を輸入しており、現行規定をくつがえすために猛烈なロビー活動を展開した。

 日本は、ここ数年、捕鯨規制を緩和するためのキャンペーンで、類似の戦略をとってきた。外交的援助協定をトーゴやセントキッツなどの捕鯨に利害関係の無い国々と取り交わし、そうした国々は、国際捕鯨委員会に加盟して捕鯨賛成側に投票したのである。エコノミストのChristian Dippelは、この現象を研究し、このforeign policy flagshipのブログに、最近この件について文を寄せている。

 タンザニアやザンビアなど被援助国は、思うに、このようなキャンペーンを繰り広げるだけの資金が無かったのだろう。以下は、この国々が禁止を解きたいと願ったまず最初の理由の、主なものだ。ザンビアの観光環境天然資源大臣Catherine Namugataが、こう述べている。「われわれは、ゾウの保護に資金がいるからという理由で、子供を学校にやれないことを正当化出来はしない。わたしは、ザンビアに神がわれわれに与えてくださった天然資源を使うことを許可してくださるよう、強く訴える」

 また一方で、この件に関し、わたしはどちらかというと環境保護関係者の側につくが、しかし、貧困国政府の失望落胆も、確かに理解できるのである。貧困国は、絶滅危惧種を守るために経済的犠牲を強いられており、その一方、世界第二の経済国家は、絶滅の危機に瀕している複数の種を、あさり続けているのである。
(翻訳協力 蔦村的子)

【JTEFのコメント】

 絶滅の危機にひんしている複数の種をあさり続けている世界第2の経済大国、日本。
この秋、日本は生物多様性条約締約国会議を名古屋で開催します。ホスト国として多様性の重要性を訴える一方で、海洋生物の多様性には関心を払わずにマグロをとり続けられるように激しく行った各国へのロビー活動。豊かな地球を守るためには、日本がしていることを私たち国民がしっかり見てみんなに伝え、おかしいことには声をあげていかなければ。

 ところで、象牙についても日本は中国とともに大量消費国です。なぜ、マグロと象牙でこれほどくっきり明暗が分かれたのか。単純ではありませんが、象牙はつい昨年101トンがこの2国によって輸入されたという流れは大きいと思います。輸出をしたのはタンザニアとザンビアではありませんが、会場に「象牙は去年の今年でなくても…」という雰囲気が流れても不思議ではありません。需要者側の日本、中国としても前回のCoP14(2007年)のときほど熱烈な活動をするモチベーションはなかったのではないでしょうか。いずれにせよ、今回簡単に否決されたから次回(2013年)も大丈夫という保証はまったくありません。
 なお、この記事ではふれられていませんが、2006年だけで3万8000頭のアフリカゾウが象牙目的で密猟されたというアメリカの研究者による推定があります。その相当の部分がタンザニアで起きたと見られています。


現地パートナーリンク集リンクのお願いお問い合わせ個人情報保護方針