インドネシアの混乱したトラ政策

テイラー・ターナー著 2010年2月3日

 インドネシアのトラ保護政策が批判を受けている。トラ2頭が保護地域から、西ランプンの大自然に放たれたのである。インドネシア政府が提案してきたトラの「養子縁組計画」により、トラが飼育繁殖施設から富裕な市民に貸し出されることになるのだ。

 インドネシアのスマトラトラの個体数は劇的に減少した。森林伐採により生息地の多くが減少し、医薬品としての利用目的での違法取引のために捕獲され続けている。

 インドネシアにスマトラトラはわずか400頭しか残存していない。この減少しつつある個体数(の問題)に取り組むインドネシア政府により、一対の野生のトラが、十分な広さの土地を持ち10億ルピー(約7万5千ドル)を支払える程十分な現金を持つ市民に貸し出されることになるのである。

 森林省の役人は、「養子縁組計画」を提案することで、人々のトラへの強い興味を満足させ、違法な捕獲や取引を避けるために役立つことを希望している。

「養子縁組」が可能なトラは繁殖施設より解放され、養子縁組されたトラが要らなくなったときは簡単に返却ができるように、国の所有物となる。

 トラは一対で貸し出されるので、仮の住まいに滞在中に産まれた子も全て、国の所有物になる。

 付け加えると、貸出者は特定のおりの寸法であるとか、獣医や動物福祉関係の行政官が定期的に訪問することになる等、厳密な規則に従わなければならなくなる。

 しかし養子縁組は、森林省の大臣であるズルキフリ・ハサンが始めた別のトラ保護計画とは対照的である。当大臣は、その別の計画により、最近、タンブリン野生生物自然保護地域で捕獲したトラを2頭放ったばかりだ。

 スマトラトラの生命を脅かしている主な要因の1つは、相変わらず生息地の消失であるにもかかわらず、ズルキフリ大臣は、トラ2頭を豊富な獲物がいる広い森林地区に放ったと主張している。

「その地域には、イノシシやシカやカモのような餌になる動物がたくさん見つかっている。その密林では食物不足について心配する必要はない。」とズルキフリは述べた。

 スマトラトラ2頭は(森林地域に)放たれる前に、森林を管理する行政官がトラのあらゆる動きを追跡できるように、GPS(全地球位置把握システム)追跡首輪を装着した。その装置は8時間ごとに、西ランプンからジャカルタまでに設置された6か所の監視所にデータを公表する。首輪は2年間で自然に離れ落ちるように設計されている。

 政府の2つの新規構想は、保護に対してかなり異なる研究方法を取っているが、1つ両者に共通していることは、保護団体や現地のNPO(非営利組織)それに市民から同様に厳しく批判されているということである。

(森林)省の行政官は、トラの養子縁組計画に関連して、既に12の異なる環境NPOから苦情を受けていると述べている。環境NPOは、その計画が施行される前に、政府に再考してもらうために、いかなる反対意見をも求めるように促してきた。

 グリーンピース(環境保護を唱える国際的な運動団体)の森林キャンペーナーであるバスター・マイターは、養子縁組計画は何よりもお金目当てだと述べている。

「そのことは、政府がスマトラトラを脅かしている真の問題を深刻にうけとめていないということを表している。政府は森林の伐採権の付与に歯止めをかける必要がある」と彼はいう。

 同様に、環境保護関係者も2頭のトラに対する懸念を表明してきた。2頭のトラは繁殖施設より放されて、人間居住区ブリンビンとの境界にあるブキットバリサンスラタン国立公園内にある大自然に放たれた。

 村落が国立公園内にあるにもかかわらず、政府は常にその村のことを、小さな合法的な少数集団であると認識してきた。

 ランプン州の伝統的集落同盟(traditional community allicance)の代表であるイチワンコ・メートル・ヌーは、トラを放つという政府の決断は無責任であり、市民をないがしろにしていると述べている。

「ブリンビン集落の居住区と境界を接する地域にトラを放つことは、政府やランプン政府部局が市民を保護できないことを示している」と所長は述べている。

 2008年7月に、以前に人間を攻撃したことがあると考えられている4頭のトラが、同じ地域に放たれた。
(翻訳協力 日原直子)

【JTEFのコメント】
 インドネシアが本当にトラの保護に関わる意思があるのなら生息地をこれ以上開発しないというのが第一に優先されるべきことです。『貸出』のトラのようにお金儲けだけを考えているようでは、トラの未来も、人々の未来を描くことはできません。