ゾウの生態
ゾウの生態
ゾウの分類
現在、地球上にはアジアゾウElephas maximusとアフリカゾウLoxodonta africanaの2種のゾウが生息しています。アフリカ中央部の熱帯林に生息するマルミミゾウLoxodonata africana cyclotisはアフリカゾウの亜種(別種とするほどではないが相当の変異が見られる、種の地域的グループ)ですが、別種に分類されるべきだという主張もあります。
ゾウの形態
アフリカゾウは地上最大の動物で、体長(鼻先から尾の付け根)が4~5.5m、全高(地面から肩まで)が3~4m、重さは5~7トンにも及びます。アジアゾウはそれより一回り小さいサイズです。背中が山のように丸く盛り上がっていて、耳が小さいのがアジアゾウ、谷のように引っ込んでいて、耳が大きく、アフリカ大陸のような形をしているのがアフリカゾウです。
ゾウの生態
ゾウは完全な草食で、毎日大量の草、枝葉を食べます。 ゾウは、こうした食べものを求め、日常的に、さらに季節的にはより広範囲に移動する動物です。行く先々で食べた植物の種子をフンによって遠くまで運びます。ゾウの消化はあまりよくないため、糞には草木の種子が残りますが、それが行く先々の土地で発芽し、森の再生につながることになるのです。ゾウにしか食べられない堅い木の実を食べて発芽させやすくすることもあります。ゾウの群れは木の皮をはいで食べ、木の幹そのものを倒すこともしばしばですが、そうすることで森に光を入れて下草を育て、森林と草地がモザイクとなった植生を作り出します。ゾウの森林を草地に変える力は強大で、これが生態系の自然なプロセスとなっています。
ゾウが群れで鬱蒼とした森林を繰り返し歩くことで「ゾウ道」ができ、他の野生動物たちがこれを利用します。乾季に水を掘り当てるのもゾウの役目です。ゾウの日常的なくらしが独特な生態系を創り上げ、様々な生きもののくらしを支えているのです。
ゾウの社会
ゾウは群れで暮らす高度に社会的な動物で、寿命は60歳以上です。母系の群れで、メスとその子が単位ですが、おばあさん、出産を終えた娘たち、孫たちという構成がよくみられます。母親、おばあさん、叔母さんはもちろん、5歳以上のメスゾウは皆で子ゾウの面倒を見ます。群のリーダーはおばあさんです。孫たちに危険があるとそのリーダーシップのもと子ゾウは群れで囲み込み、みんなで子ゾウを守ります。オスたちは12~15歳くらいの時期に群れから独立し、同じ年頃のオスゾウどうしで群れることが多いですが、やがて単独で暮らします。
ゾウは、視覚(鼻や耳や体全体を使った身振り)、聴覚(大人のゾウが発する呼びかけを26種に分類した研究がある)、触覚(鼻どうしからめたり、鼻を体にはわせたり口元に持って行ったりする)、臭覚(ひづめの間から化学物質を分泌する)によって、複雑なコミュニケーションをしていることがわかっています。
ゾウの分布
ゾウは、かつてアジアの南側全域に(アジアゾウ)、アフリカのサハラ砂漠以南全域に(アフリカゾウ)広く繁栄していました。ところが、今日の分布は中央アフリカと東アフリカ・南アフリカの一部を除くと、まるでかつての分布図の上に散らした「インクの染み」のような状況になってしまいました。インドのゾウの生息地は、1960年代以降、その70%が失われてしまっています。
アジアゾウ
https://www.iucnredlist.org/species/7140/12828813
アフリカゾウ
https://www.iucnredlist.org/species/12392/3339343
ゾウの個体数
現在、アジアゾウは、アジアの13か国に約4万7000頭が生息しているのみです。一方のアフリカゾウは36か国(絶滅した後再導入が行われたスワジランドを含めると37か国)に約41 万5000頭、と一桁違いますがその数も19世紀に始まるヨーロッパ諸国によるアフリカの植民地化以前にいた2000万頭の2%に過ぎません。