イリオモテヤマネコの生態
イリオモテヤマネコの生態
イリオモテヤマネコとは?
イリオモテヤマネコPrionailurus bengalensis iriomotensisは、世界で西表島だけに生息するヤマネコです。
1965年に動物文学者の戸川幸夫氏らが発見(1967年に新種記載)、東京23区全体の約2分の1にも満たない島にヤマネコが生息していること自体が奇跡的などといわれ、国際的にも注目されました。
西表島は水の豊かな、森林におおわれた島です。9万年も前に、大陸から離れて島化し、その長い地史の中で独自の生物進化が起こりました。その結果、島固有の種、亜種(別種というほどではないが、相当の変異が見られる種の地域的グループ)を生みました。イリオモテヤマネコもその1つです。
イリオモテヤマネコはイエネコとほぼ同じくらいの大きさで(体重約3~5kg)、やや胴長短足気味で尾は太いという特徴があります。体に小さなまだら模様が見られ、目の周りに白いくまどりがあります。顔つきはトラなどの大型野生ネコに似ています。明け方・夕暮れにとくに活発に活動する夜行性で、単独で暮らします。
イリオモテヤマネコの社会
イリオモテヤマネコには決まった場所に定住する定住ネコと、定住場所を求めて放浪する放浪ネコがいることがわかっています。放浪するのは親離れした若いネコや年老いたネコで、繁殖できるのは定住ネコだけと考えられています。
イリオモテヤマネコのメスは、仔育てに必要な採食場所や巣を確保するために、良好な環境に定住します。そのため、行動圏はなわばり的で、定住メスどうしではほとんど重なりません。また、定住メスが死亡したりしていなくなると、行動圏の配置はほとんど変わらないまま、新しいメスが定住します。
イリオモテヤマネコのオスは、繁殖相手のメスを確保するためにメスがいる環境に定住します。そのため、定住オスの行動圏内には1~2頭の定住メスの行動圏が含まれることが多くなります。定住オスどうしの行動圏はほとんど重なりません。
イリオモテヤマネコの一年
春:だんだんと気温が上がり、梅雨(5月)に近づくころ、イリオモテヤマネコは昼間の活動が少なくなり、採食場所に近い樹胴の中などで2頭前後の子を出産します。
夏:サガリバナが咲き始めるころ、母ヤマネコは活発に動く子ネコたちを安全に、獲物を獲って食べさせるのに一生懸命です。
秋:北風が吹き始めるころ、子ネコたちも独り立ちし、オスもメスも一頭で明け方や夕暮れに行動することが多くなります。オスの仔は放浪し、何年かして他のオスがいないメスの行動圏を見つけたら、それを取り囲むようにして定住します。メスの仔については、母親のそばにとどまり、いずれ定住する行動圏を譲り受けるのではと推測されていますが、今のところよくわかっていません。
冬:冷たい雨の多い冬はヤマネコたちの恋の季節です。昼間にも行動したり、これまでは別々に暮らしていたオスとメスが一緒に行動する日もあります