ゾウー危機と保全の動きの今_2025
ゾウー危機と保全の動きの今
2025
マルミミゾウ アフリカサバンナゾウ
マルミミゾウの個体数
IUCNアフリカゾウ専門家グループによれば、熱帯アフリカの森林に生息するマルミミゾウの個体数は、科学的調査にもとづく2023年時点評価として13万5641頭(99,290~172,254頭)と推定されています。これとは別に、科学的調査が行われていない生息域にも、8,004~10,374頭が生息する可能性があります。
サバンナゾウの個体数
サバンナゾウの最新の個体数推定は2025年初めに公表される予定です。もっとも、その半数以上が生息すると考えられている南部アフリカのカバンゴ・ザンベジ国際保全地域(KAZA)では、2022年に調査がいったん完了していて、推定227,900頭が生息するとされています。KAZA内のゾウ個体数は、2014~2015年調査時と2022年調査時の間で、統計学的に有意な変化はありません。しかし、この7,8年の間、個体群成長率が著しく低下しており、その主たる理由してKAZAのゾウの6割を占めるボツワナでゾウの死亡率が高まっていることが指摘されています。

脅威の状況
最近のゾウに対する脅威の状況は、アフリカ内の地域によって異なります。例えば、マルミミゾウ全体のわずか5%が暮らす西アフリカでは、1900年から2013年の間に森林の約90%が喪失、生息環境の悪化にゾウが苦しめられており、人との衝突が増加しています。中部アフリカでは、象牙密猟が深刻です。2016年以来2020年までは減少傾向にありましたが、2021年に再び増加しました。乾燥した地域では、気候変動の影響が懸念されています。干ばつ等による植生の変化・劣化、水や食べ物の確保困難が、ゾウに移動を余儀なくさせ、その際に土地利用を拡張し続ける人間との衝突を増加させるためです。
参照文献:
- CITES SC78 Doc. 65.1 Annex 1 “African elephants (Loxodonta Africana): Conservation status”
- Scott Schlossberg & Michael Chase. 2024. Population trends and conservation status of elephants in Botswana and the Kavango Zambezi Transfrontier Conservation Area –A review of elephant aerial surveys, 2010 – 2022. Elephants Without Border
アジアゾウ
個体数の動向
アジアゾウは、13の生息国に生息し、その数はおよそ5万頭と推定されています(詳細は2024年発行年報参照)。一方、世界全体で約1万5000頭のゾウが飼育下に置かれており、そこには非生息国の動物園等で飼育されている約3,000頭が含まれます。
野生個体群は、バングラデシュで減少傾向がみられるものの、南インドでは全体的に安定しています。しかし、東南アジアでは、インドネシア、ラオス、マレーシア・サバ州(ボルネオ島)、ミャンマーで減少がみられます。なお、ベトナム、ネパール、中国、カンボジア、ブータンの個体群は減少傾向を示してはいませんが、個体数が既に1,000頭に満たないため、いつ絶滅してもおかしくない状況が続いています。

ラオス政府が閣議決定した「国家ゾウ行動計画」に示されたゾウの分布とそれぞれのエリアの個体数。生息域がどれほど細かく分断され、小さなサブ個体群として孤立しているかがわかる。
脅威の状況
減少傾向にある国では特にそうですが、ゾウにとって脅威となっているのは、アジア全体で広がり続ける人の定住・農業による生息地の減少、採食場所の劣化、鉄道・道路・水路など線状のインフラ開発による生息地のつながりの分断です。生息地の消失・分断化は、人とゾウとのコンフリクト(衝突)も激化させています。アフリカ同様、気候変動による生息環境の変化がもたらす影響も懸念され始めています。

一方、密猟の脅威も続いています。インドのアッサム州では、昨年、一本約14kgに達するアジアゾウの牙2本が押収されるなど、密猟象牙の違法取引が続いています。ミャンマーでは、皮(ゾウの皮下層から装飾用の玉(ビーズ)を削り出し、あるいは薬用に粉末にして利用する)や肉を目的とした密猟が行われています。
参照文献:
- CITES SC78 Doc. 65.1 Annex 1 “Asian elephants (Elephas maximus): Status, Threats and Conservation actions”



