トラの生態

トラの生態

トラの分類

20世紀初頭には9亜種(別種とまではいえないものの、お互いの間で相当の変異が見られる、種の地域的グループ)いたトラは、バリトラ、カスピトラ、ジャワトラ、アモイトラの4亜種が絶滅。現在5亜種が細々と生存しています。
Panthera tigris tigris ベンガルトラ Bengal tiger
生息国:インド、ネパール、バングラデシュ、ブータン
Panthera tigris altaica アムールトラ、Siberian tiger
生息国:ロシア(ウスリー東部)中国東北部
Panthera tigris corbetti  インドシナトラ、
生息国: タイ、中華人民共和国南西部、ミャンマー、ラオス、ベトナム
Panthera tigris sumatrae スマトラトラ Sumatran tiger
生息国:インドネシア(スマトラ島)
Panthera tigris jacksoni マレートラ Malayan tiger
生息国:半島マレーシア

トラの分布

トラPanthera tigrisは、20世紀初頭には、東トルコからオホーツク海に至るまで、アジアに広く分布していました。熱帯性落葉樹林からシベリアのカバノキ林、川と海が出会うマングローブ林、ヒマラヤ山麓の深い草原というように多様な環境に適応してきたのです。しかし、現在ではその広大な分布も現在では見る影もありません(分布図参照)。また、20世紀初頭には10万頭といわれたトラの数も2,200~3,200頭(繁殖可能な成熟個体の数)にまで激減しています。さらにラオス、ベトナムに生息していたインドシナトラは絶滅寸前と言われています。カンボジアは2016年に絶滅が政府から発表されました。

分布図

トラの生態

熱帯雨林や落葉樹林・針葉樹林・乾燥林・マングローブの湿原など様々な環境に生息する適応力があり、ネコ科動物には珍しく水が好きで泳ぎも得意です。食性は動物食で、主に哺乳類(シカ類、イノシシ、ガウル=野生のウシ等)を食べます。ツキノワグマやナマケグマ・ヒョウなど他の肉食獣も捕食することもあります。 大型の獲物が得られないときはヤマアラシ類などの齧歯類、鳥類、カメ類、カエル、魚類などの小型の獲物も食べます。水辺でワニを狩るトラもいます。長距離は走らず、獲物を発見すると茂みなどに身を隠し近距離まで忍び寄り、獲物に向かって跳躍して接近し、主に獲物の側面や後面から前肢で獲物を倒し、噛みついて仕留めます。狩りの成功率は低く10 – 20回に1回成功する程度で、獲物は茂みの中などに運び、大型の獲物であれば数日をかけ何回にも分けて食べます。

トラの社会

群れは形成せず、繁殖期以外は単独で生活しています。縄張りは獲物の多さによって決まりますが、3-4頭のメスの縄張りを囲むようにオスの縄張りがあります。メスの妊娠期間は100日程度で1回に2-3頭の子どもを産みます。メスのみで幼獣を育て、幼獣は生後18 – 24か月は母親の縄張り内で生活し徐々に独立しますが、新天地を求める若いトラがなかなか縄張りを持てず、すでにあるオスの縄張りに入ると殺されることもあります。生息地が狭められ、分断されつつある近年はとくに、生息環境の整った新しい縄張りを確保することがむずかしくなっています。