世界自然遺産登録推薦取下げ後の西表島:IUCNの指摘を厳しく認識し、観光客の総量規制を

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2018年6月1日、国は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録推薦を取り下げました。これは、世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)による調査報告書で、延期が相当と勧告されていたことを受けての判断でした。
JTEF西表島支部やまねこパトロールは、西表島の世界遺産リスト一覧表記載推薦について、IUCNへ2つの意見書を提出し、推薦地の拡張や西表島への入域制限およびフィールド毎の総量規制の必要性などを訴えてきましたが、今回の調査報告書では、まさに同様の指摘がなされています。特に観光管理については、現在においても重大な問題と強調されていることから、関係機関は勧告に従い一刻も早く対策に取り組む必要があります。
国は、再スタートを切り、来年2月1日までの推薦書の再提出と確実な登録を目指したいと述べていますが、そもそも世界自然遺産の制度は、その遺産の保全をはかることを目的としています。登録を急いだ方がよいのかどうかは、現状での登録が自然保護にプラスなのかマイナスなのかで判断すべきです。少なくとも西表島については、観光客増による自動車運転者増・多様化、生態系への入り込み増のリスクに対し、現状「丸腰」の状態です。IUCNの延期勧告は対策準備の猶予をくれたものと捉え、西表島を含めた各地域が対策(西表島では特に観光客の総量規制の仕組みの導入)を急ぎつつ、その実際の進捗に応じて、再推薦のタイミングをはかるのが本来のあり方というべきでしょう。

西表島等の世界自然遺産登録推薦を評価した国際自然保護連合(IUCN)の報告書は、西表島についても重要な課題を指摘しています。
①「北部および北西部の重要な河川流域の推薦地への編入」が必要である
②観光利用による生態系のかく乱が現在においても重大な問題であり「島および特定地域の(観光客の)収容限界の設定を含めた包括的な観光利用計画を立て、緊急に取り組むべき」

IUCNの報告書の表紙(左)と日本の登録推薦に関する報告箇所の扉(右)
世界自然遺産登録が延期になっても、国や県からは「思い切った」と言えるほどの自然保護強化策は聞かれません。環境省は「自然を保護する仕組みを手に入れたい」と口では言うのですが、自ら観光客の入域を規制する権限はありません。沖縄県は、エリアごとの観光客の収容限界を念頭に置いた、持続可能な観光振興計画を立てるべきですが、現在の計画には、観光客を増やすことしかほとんど念頭にありません。
結局、現場で起きるオーバーユースの未然防止は地元の竹富町がやるしかありません。その意味で、竹富町長が「入域客の規制も含めた見直しが必要」と6月2日の地元紙(八重山毎日新聞)でコメントしたことは、非常に重要な一歩だといえるでしょう。

6月2日八重山毎日新聞記事

 

西表島の自然の過剰な観光利用(オーバーユース)への対処は、もはや掛け声から実行の段階に移ったのです。しかし、竹富町によるフィールドへの立入り制限が実現できるかどうかは、国有林の地主である林野庁がこのような自治体(竹富町)の取組みに理解を示すことが必要ですし、観光業者との調整も必要になります。各関係者は、IUCN勧告の重みをよく認識し、総量規制導入へ一丸となって進んでいくべきです。
JTEF西表島支部やまねこパトロールは、「自然環境の変化と観光事業者の実態を正確に把握し、各フィールドの収容力を考慮してどれだけの人を受け入れられるかを設定することは、自然環境を保全し、住民の生活を守ることにもつながる」という認識のもと、各機関へ提言を続けていきます。

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