JTEFについて

JTEFについて

私たちの役割

野生の生きものの立場に立ってその世界を守ることを通じて生物多様性を保全し、人の豊かな自然環境を守ることをめざす。

野生生物保全について

「野生生物保全」は、人間の手によって絶滅の危険を引き起こす原因を取り除き、その後は野生生物とその環境の回復力にゆだねることを原則とすべきです。ただし、自然な回復が望めない場合には、人間が慎重に手をさしのべるべき場合もあります。こうした措置は、それぞれの野生生物のおかれた状況をよく念頭におきながら、「自然な進化のプロセスを止めない、さまたげない」ように実施されなければなりません。

地球は、生きもののいない惑星と異なり、地球では生物圏(生きものが存在する空間)内における極めて複雑で精密な働きによって、ゆらぎのある物理的不均衡状態(動的平衡状態)が生み出され、維持されています。私たち人間を含む地球上のあらゆる生きものの生存は、そこで生まれる安定したエネルギーの流れ、栄養塩類や水を含む物質循環、そして多様な生物間の相互作用に支えられているのです(エネルギーの流れと物質循環は物理的な作用ですが、それらも生きもののはたらきによって調節されています)。言い換えると、人間を含むあらゆる生きものそれぞれの生存に適した大気、水、土壌および相互に関係し合う(他の)生きものの存在(例:食物となる動物や植物)から成る自然環境が成立しているのは、生きものの世界のたまものということです。 では、生物圏内で展開する生きものの世界のはたらきがそれほど複雑で精密になるのはなぜでしょうか。それは、生物が多様であることによると考えられています。今日、地球上にお互いに姿も暮らし方も異なった、様々な多くの命が生をつむいでいます。ヒトというひとつの生物種の中でも一人一人が異なっていますし(種内の多様性)、小さなチョウと人間のように異なった種の間では驚くほどの違いがあります(種間の多様性)。様々な生物種と物理的環境(地形や気温や湿度など)との組み合わせである「生態系」も、場所によって大きく違っています(生態系の多様性)。これら様々なレベルで生物が多様であることを総称して、「生物多様性」と呼んでいます。したがって、地球上の生きもののひとつである人間にとっても、地球の生物圏で展開する生物多様性に富んだ生きものの世界は生存の基盤を成すといえるのです。  野生生物=地球上に自ずと誕生した生きものを保全する根本的な理由はここにあります。

言うまでもなく、「野生生物保全」の主体は人間であり、「野生生物保全」は人間社会の営為の一つを成します。では、具体的には何をする(目指す)ことなのでしょうか。 野生生物=地球上に自ずと誕生した生きものを保全する理由は、地球の生物圏で展開する生物多様性に富んだ生きものの世界が私たち人間を含むあらゆる生きものの生存基盤を成すことにありました。では、生物多様性に富んだ生きものの世界はどのようにして成立し、今も存在し続けることができているのでしょうか。生きものの世界は、その46億年の歴史の間に、ある集団の中で変化が生まれ、別の種に変わり、あるいは一つの種から多数の種が分かれて誕生するという「進化」のプロセスを通じて発展してきました。ときには大量に種が絶滅することもありましたが、それを穴埋めするかのように新たな種が誕生、歴史全体としてみれば、ごく最近まで多様さを増す方向に進んできました。このように、生物多様性に富んだ生きものの世界は、生物進化のはたらきによって成立し、存続し続けてきました。したがって、その世界の営みが続くためには、生物多様性を生む自然な進化のプロセスが確保されていることが絶対条件になります。 このように、「野生生物保全」とは、この生きものが自然に進化するプロセスを「止めない」、「さまたげない」ようにするための人間社会のあらゆる営為を意味すると言えます。

1992年に「生物多様性に関する条約」が成立し、「生物多様性」ないし「生物多様性保全」が公共政策の分野に本格的に登場してかなりになりますが、近年、日本でも「生物多様性保全」という用語の知名度が各界でそれなりに高まってきました。その反面、論者の立場によって、強調する側面が異なりやすいこともあって、「生物多様性保全」が何をすることなのかについては、理解が進んでいないように思われます。  例えば、より質が高く、大量に、高い生産効率で、食糧、医薬品その他人間の生存に必要な物資の元手となる「宝庫」としての価値があるなどとして、「生物多様性」は(自然)資源の集合体ないし生産システムのように説明される場合もあります。二酸化炭素の「貯蔵庫」であるとか、水の「浄化装置」になぞらえて説明されるのも、そのような発想に基づくものです。生物多様性に富んだ生きものの世界が、人間社会にこのような便益=生態系サービスをもたらしていることは事実です。しかし、忘れてはならないのは、特に注目されやすい(一部の)生態系サービスは、生物多様性に富んだ生きものの世界の営みから生じる結果の一部に過ぎないということです。そのような発想になりがちなことはわかりますが、特に人間社会に都合の良いサービスを切り取ってそれを確保することが、生物多様性保全の核心であるというような誤解は避ける必要があります。 そのため、ここでは「野生生物をなぜ保全するのか」「野生生物保全とは何をすることなのか」というように、「生物多様性保全」という用語を敢えて使いませんでした。しかし、本来の「生物多様性保全」とはこれまで述べてきた「野生生物保全」と同義であると考えています。

JTEFの歴史

1997年「トラ保護基金」設立

2000年「ゾウ保護基金」設立

トラ保護基金とゾウ保護基金が「野生生物保全論研究会」(JWCS)のプロジェクトに。

2009年 JWCSから独立してNPO法人「トラ・ゾウ保護基金(JTEF)」設立。「イリオモテヤマネコ保護基金」がJTEFの新プログラムに

2011年 JTEF、「認定」NPO法人に

2016 年 JTEF西表島支部「やまねこパトロール」設立

JTEF事務局(本部)

戸川 久美

理事長

坂元 雅行

事務局長理事/弁護士

古島ひろみ

事業担当理事

佐藤 尊子

プログラムマネージャー

会員・経理担当者

西表島支部やまねこパトロール

高山 雄介

事務局長

活動に参加してくれている西表島の皆さん

役員

  • 朝倉 淳也(理事/弁護士)
  • 戸田 耿介(理事/元兵庫県立人と自然の博物館主任研究員)
  • 古島 ひろみ(理事/弁護士, カリフォルニア州弁護士)
  • 辻村 章(監事/株式会社末広商会代表取締役)

現地パートナー

インド野生生物トラスト Wildlife Trust of India (WTI)

https://www.wti.org.in/
WTIは、1998年にインドの人々が設立したNPOで、インドの首都デリー郊外に本部をおいています。その使命は、インドの野生生物、特に絶滅のおそれのある種とその危機に瀕する生息地を、地域コミュニティー(住民)と政府との協働によって保全することです。当初は3名でスタートしたWTIも国内各地域に常駐するスタッフも入れると100名を超える陣容となりました。スタッフは、野生動物の研究者、獣医、法律家などの専門家も含み、インドの野生生物保全のために革新的・先駆的な取組みを目指しています。

インドには豊かな生物多様性があります。またインドの人々は、文化的・信仰的に野生生物とその環境の保護に強い思いを持っていて、法律もこれを後押してします。日本は、野生生物製品が売られている主要な国の1つです。日本国内で保全の努力が無ければ、インドのような生息国だけの努力では密猟を防ぎきれません。日本の人々の心ある行動はインドの野生生物の未来にとって大きな意味を持ちます。JTEFと WTIは大変重要な共同プロジェクトを進めています。JTEFを通してトラやゾウを代表とするインドの野生生物と生物多様性保全にご協力をお願いします。

イリオモテヤマネコ生息地保全調査委員会

イリオモテヤマネコが長期にわたって存続するためには安定した生息環境の確保が必要です。ところが、近年重要な生息地の状況が悪化、ヤマネコの絶滅のおそれが高まりつつあります。この事態を憂うイリオモテヤマネコ研究の権威が集まり、2009年6月に結成されたのが「イリオモテヤマネコ生息地保全調査委員会」です。ヤマネコの生息地保全という観点から必要なデータの収集と解析を行い、その結果が様々な土地利用計画に現実に反映するよう関係行政機関にはたらきかけています。

イリオモテヤマネコは地球上で唯一、西表島のみに生息する希少な野生ネコです。数万年も前に大陸から隔離されて以来、面積わずか289km2の小島でイリオモテヤマネコが生き延びてきたのは、奇跡です。西表島には独特な進化を遂げたイリオモテヤマネコをはじめとする世界的に貴重な生態系が存在しますが、近年、人の開発による生態系撹乱は留まることを知らず、イリオモテヤマネコの絶滅を回避するにはその生息地の保全が最重要です。
ヤマネコと人との未来のため、西表島民をはじめ国内外の多くの皆様のご理解とご協力、ご支援をお願いいたします。

専門家アドバイザー

ラーマン・スクマール博士 Raman Sukumar, PhD

アジアにおけるゾウの専門家。インド科学院生態科学センター長(教授)。国際自然保護連合・種の保存委員会(IUCN/SSC)アジアゾウ専門家グループ元委員長。インド野生生物トラスト(WTI)の協力団体であるアジア自然保護団体(ANCF)の理事長。インド政府によるプロジェクト・エレファントの運営委員。「インド野生生物理事会」委員。

野生のゾウは日本では見られませんが、日本の人々はずっと以前からこの動物に魅せられてきたと思います。インドのネール首相から東京上野動物園へゾウが送られたときの喜びは大変なものだったとお聞きしています。そこで是非、訴えたいことがあります。象牙で作られたハンコを使うことがアジアとアフリカのゾウにいかに大きな影響を与えているかということに思いを馳せて頂きたいのです。そして、自然界が未来の世代にとって不毛な世界にならないためにも、この高度に社会的で、繊細でそして賢い生きものの保全を支援していただければと思います。

西表大原ヤマネコ研究所(Iriomote Cat Habitat Conservation Research)岡村麻生 Okamura Maki, PhD

1992年、西表島でイリオモテヤマネコの研究を開始。2002年、九州大学でイリオモテヤマネコの繁殖と社会システムに関する研究で学位を取得。2002年から環境省西表野生生物保護センターに自然保護専門員として勤務。低地部のヤマネコのモニタリング、交通事故防止対策等に取り組む。2013年から、西表大原ヤマネコ研究所(所長:土肥昭夫長崎大学名誉教授)の所長代行となりイリオモテヤマネコ保全にかかわる様々な課題について、関係機関に専門的立場から助言(西表島在住)。

イリオモテヤマネコは世界で最も小さな島に住む、とても珍しい生態を持つヤマネコです。また、ほかに肉食獣のいない西表島では食物連鎖の頂点として生態系の中で重要な位置にいます。その一方で、少なくとも500年以上の間、西表島の人間の歴史を見守り、美しい伝統文化を育んできた島の豊かな自然の重要なひとつでもあります。現代はヤマネコと人との関わり方が急激に変わってしまいましたが、島の人たちが愛してきた西表島の豊かさがこの先も健全な形で存続していけるように、JTEFと共に人とヤマネコの橋渡しができたらと思っています。

賛同者のみなさん

  • 藤木勇人(志ぃさー)さん(噺家)
  • 古沢広祐さん(國學院大學客員教授、「環境・持続社会」研究センター 代表理事)
  • 前川貴行さん(動物写真家)
  • 松田陽子さん(シンガーソングライター)
  • 水野雅弘さん(株式会社TREE 代表・プロデューサー)
  • 三石初雄さん(東京学芸大学名誉教授)
  • 宮下実さん(ときわ動物園名誉園長、元近畿大学教授、大阪市天王寺動物園名誉園長)
  • 村田浩一さん(公益社団法人日本動物園水族館協会会長、日本大学生物資源科学部特任教授)
  • 森川純さん(酪農学園大学名誉教授)
  • 山極壽一さん(総合地球環境学研究所所長、前京都大学総長、京都大学名誉教授/進化論・生態学・環境生物学・動物学)
  • 山﨑薫さん(学校法人ヤマザキ学園理事長)
  • 吉野信さん(動物自然写真家)
    訃報 2023年7月12日にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げ、今までのご厚情に心より深謝申し上げます。長い間、一緒に活動してくださって本当にありがとうございました。
  • 渡辺貞夫さん(ミュージシャン)