ブログ:「イリオモテヤマネコの日」が町の条例として制定されるまで その3

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そして、2015年9月議会最終日の9月17日。お願いしていた山盛力議員が提案し、ほかの2名の議員さんが賛成者となってくれました。提案理由を聞いた議長は、委員会付託を省略することを提案し、「異議なし」との声が上がり異議なしと認め、簡単に質疑が終了。討論も「討論なし」という声で討論は行われず採決を行い、あっという間に原案通り可決し、竹富町は9月25日に「イリオモテヤマネコの日」条例が制定されました。

○イリオモテヤマネコの日を定める条例  平成27年9月25日 条例第33号

(趣旨)

第1条 竹富町は、イリオモテヤマネコと共存しながら、地域を発展させることをより明確に社会に対し意思表示し、世論の啓発を図るため、イリオモテヤマネコの日を制定する。

(イリオモテヤマネコの日)

第2条 イリオモテヤマネコの日は、権威のある専門家がイリオモテヤマネコを新種であると確認した旨公表された日が1965(昭和40)年4月15日であるという社会的根拠に基づき、4月15日とする。

(町の責務)

第3条 竹富町は、イリオモテヤマネコ保全推進期間を設けるとともに、イリオモテヤマネコの日制定の趣旨にふさわしい取り組みを恒常的に推進するため、必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

附 則

この条例は、公布の日から施行する。

第1回イリオモテヤマネコの日には、西表島で竹富町主催のシンポジウム、JTEFは西表島、上原に支部を設立した報告をし、さらに東京からヤマネコ応援歌を制作したヤマネコ応援団や歌手の坂本美雨さんらが島の子どもたちとともに歌い踊り、那覇でも行い、楽しいひと時をすごしました。

今後、毎年4月15日は、イリオモテヤマネコのことを考える日となります。おりしもこの日は亡き父の誕生日でもあります。

第2回イリオモテヤマネコの日 2017年には、ミニシンポジウム「これからのヤマネコ保護と島のくらし」を開催。琉球大学教授で長年イリオモテヤマネコの研究と保全に取り組んでこられた伊澤雅子先生をパネリストにお迎えし、ヤマネコ発見~ライハウゼン文書をめぐる騒動から、1977年に北岸道路が開通してから始まる交通事故問題と対策、そして2018年にも登録される予定の世界自然遺産とオーバーユースについてパネルディスカッションを行い、これからのヤマネコ保護について議論をさせていただきました。

第3回イリオモテヤマネコの日 2018年には、記念シンポジウム「屋久島が教える、西表島が「今」すべきこと~島民の手で自然と暮らしの未来を守るために~」を開催。ゲストに「屋久島うみがめ館」の大牟田一美氏をお迎えし、1993年に日本初の世界自然遺産に登録された屋久島での事例について話していただきました。

また、発見当時、大原中学校の生徒さんたちが遠足で出会った弱ったヤマネコを生け捕り、途中死んでしまったため、先生が皮をはぎ骨を埋めていたのを、翌月父が来島したときに掘り起こし、それがタイプ標本になったのですが、当時の中学生が期成会を作り募金を集め、モニュメント完成。この日、除幕式が行われました。

第4回イリオモテヤマネコの日 2019年には石垣離島ターミナルで、JTEFやまねこパトロールと竹富町共催でヤマネコ保護のパネル展示。

また西表島東部(大原)と西部(上原)で記念シンポジウムを開催 (やまねこパトロール、竹富町共催)。人、道路慣れ対策を討論するなど事故防止を考えました。

第5回2020年、第6回2021年は新型コロナウィルスの影響でイベントは行われませんでしたが、今年2021年は各学校で校長先生から、今日は町の条例で決まった「イリオモテヤマネコの日」だということや、ヤマネコとともに暮らす私たちがヤマネコをはじめとする島の自然を守るためにできることなどを話していただくよう教育委員会にお願いし、さらに八重山毎日新聞ではヤマネコの日にちなんだ連載コラムを企画してもらいました。

今までのヤマネコの日を振り返ってみると、交通事故が過去最多になったり(2018年に9頭の事故)、世界自然遺産に国が申請していることで、もし今のまま世界自然遺産に登録されたら西表島の暮らしも自然環境も大きく変わってしまうのではないかというような大きな問題を抱えている時期でしたから、シンポジウムを開き厳しい議論をしてきました。 今後もそういうときもあるでしょうが、基本は「イリオモテヤマネコの日」には、いろいろな生きものとともに暮らせる幸せをかみしめながら、みんながヤマネコの立場になって島を俯瞰して見るという日になればいいなと思います。

戸川久美 JTEF理事長