ブログ:野生の生きものと共存するための「ニューノーマル」をめざして

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新型コロナウイルス蔓延の影響による健康、日常生活、経済への被害は世界中に広がりました。人間活動全般が大きく停滞した結果として、野生動物にも大きな影響が及びつつあります。

生息地での野生動物のくらしは、ゆったりしたものとなり、彼らはより広い範囲に「足を延ばそう」としています。例えば、インドでは、トラが村の付近でよくみられるようになった場所もあるようです。人間の観光や開発事業が停滞し、日常生活上の動きが不自由になった影響が大きいのでしょう。今年はイリオモテヤマネコの交通事故が1件も確認されていません。密猟や違法取引はどうでしょうか。エチオピアでは1日で6頭のアフリカゾウが象牙を切り取られて殺された等々のニュースを見れば、依然事態が深刻であることは相変わらずのようです。一方、保護活動への影響は、食用目的を中心に野生動物取引禁止に向けた取組みが活発化する反面、アクセス制限の結果から、生息地における活動は停滞を余儀なくされています。ワシントン条約の会議も延期され、東京都の象牙取引規制に関する会議もストップしています。この数カ月の人間活動停滞は、野生動物にとって吉ともなり凶ともなっているようです。

  これからの数年間は、野生動物保護にとって混乱と一層の試練の時期になりそうです。分布を広げる動物を元の場所へ押し戻そうという人間側からの圧力が各地で強まり、多くの動物が命を落とすでしょう。農村部で経済的に困窮した人々がこれまで以上に生息地に入り込み、その環境が悪化するかもしれません。観光収入を大きな財源として野生動物保護を強化してきたアフリカ諸国などは、戦略の見直しを迫られます。野生動物取引は縮小傾向に向かうものの、一方で「野生動物はマイナスだけでなく、プラスも生む」と象牙取引等お金になる取引を正当化する動きも強まるでしょう。野生動物保護活動は、寄付収入の減少によって弱体化することが懸念されます。 世界は、これからも続く苦難の原因が、地球の各所で進化、多様化してきた自然生態系の攪乱にあること、その状態を修復するためには人間活動の「広がり」と「濃さ」を大幅に低下させざるを得ないことを肝に命じ、人間と野生の生きものがこの地球で共存するための長期ビジョンを描き直す必要があります。「ニューノーマル」のあり方もそこから考えるべきではないでしょうか。私たちも、この視点をもってインドや西表島の現場での保護活動を、そして野生動物の商業取引抑制に向けた活動を強化していきます。

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