IUCNから出された課題と 西表島の現状

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2021 年 6 月 4 日未明、世界自然遺産の諮問機関である IUCN(国際自然保護連合)は、政府の「奄美大島・徳之島・沖縄島北部及び西表島」世界自然遺産登録リスト記載登録の第 2 次推薦についての報告書を世界遺産委員会の HP で公開しました。
公開された報告書では、西表島の課題について、特に以下の点を指摘しています。

・希少生物のロードキルが「脅威」として挙げられており、イリオモテヤマネコについて「わずか 100 頭と推定されているイリオモテヤマネコは 2018 年に 9 件の交通事故が発生しており、観光客と車が増加するに伴い交通事故リスクが高ま
ると予想される。」
・観光客増加には、イリオモテヤマネコの交通事故増加のほか、推薦資産の顕著な普遍的価値に悪影響を及ぼす数多くの懸念があり、対策の実効性を慎重かつ定期的に評価する必要があるとし、策定済みの「持続可能な西表島のための来訪者
管理基本計画」では不十分であるとしている。そのうえで、観光による影響評価を観光管理計画に組み込むこと(客観的に評価された影響の度合いに応じ、計画的に受け入れる観光客数を増減させる)が可能となるまでは、西表島への入域
客数を増加させない、または減少させるよう求めている。

IUCN は 2017 年の第 1 次推薦に対して評価を行ったときから、特に西表島のオーバーツーリズムに懸念を示していましたが、今回の第 2 次推薦についてもその対策を繰り返し求めることとなりました。日本政府、沖縄県、竹富町は前回の評
価にこたえる形で、エコツーリズム推進法による特定自然観光資源によるフィールド毎の入域規制(西表島縦断道、ヒナイサーラ・西田川エリア、テドウ山など)を行うことを決定しました。しかし、遺産登録を来月に控えた今ですら制度運用のめどはたっていない状況です。そして、西表島自体への入域観光客の総量規制については、「持続可能な西表島のための来訪者管理基本計画」では具体的な方策が示されず、現状では総量規制ではなく、「混雑カレンダー」による来訪時期の分散のみが予定されているに過ぎません。
関係機関は IUCN の勧告を真摯に受け止め、世界に誇る西表島の自然を後世に残していけるよう「具体的な」入島観光客の総量規制対策に取り組む必要があります。