ブログ:象牙業界への補助金に関するEIA・JTEF2024年提言に対する東京都の回答
https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2025/07/250715-Yoshino.jpg 500 497 Japan Tiger Elephant Organization Japan Tiger Elephant Organization https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2025/07/250715-Yoshino.jpgトラ・ゾウ保護基金(JTEF)と米国のNGOであるEnvironmental Investigation Agency(EIA)は、小池百合子東京都知事に対し、2024年6月11日付の書簡および「象牙業界団体に対する東京都補助金に関する意見書」を提出しました。この補助金交付は、象牙需要を高めつつ、象牙の国際取引再開を目指す活動に資金提供するものであり、東京都による都内の象牙取引改革のための取組みおよび国際的な勧告と真っ向矛盾するものでした。
意見書提出から1年が経過しましたが、大きな進展がありました。東京都が私たちの提言へどのように対応したかをご報告します。
上記2024年意見書に示した提言は、次のとおりでした。
- 象牙の国際取引再開を図ることや国内の象牙工芸品・製品需要を高めること、すなわち象牙取引を促進することを目的とした補助金の交付は、象牙業界に対する補助事業そのものを廃止するか、または補助対象事業を原材料転換支援若しくは職種転換支援に切り替えることにより、ただちに停止すること
- 矛盾したメッセージを解消し、都内における象牙需要の低減および合法象牙取引の制限に取組む姿勢を明確にするべく、東京都の象牙取引および象牙産業に関する政策を明確に示した宣言を公表すること
- 有識者会議の提言にしたがい、狭い例外のみを除いて東京都内の象牙市場を閉鎖するべく、東京都議会によって採択される条例を制定すること
その後、東京都政策企画局から、庁内で提言事項に関する措置を実施すべく、関係部局間で検討を行うと伝えられたことから、JTEFとEIAは、内部での検討および具体的な行動をするための時間を考慮して回答期限を延期していました。
2024年6月に当団体らの意見書が検討された結果、補助金交付要綱が令和6年10月15日付で改正されました[1]。特に注目されるのは、象牙業界団体が行う「適正取引等に基づく経営安定に向けた取組」に限って補助の対象とすることとされたことです。これに伴い、「現在輸入禁止になっている象牙の輸入再開に向け、象牙のワシントン条約附属書Iから附属書IIへの移行をめざして行う事業」および「象牙の 輸入禁止によって影響を受けている象牙事業者の経営の安定を図ることを目的に行う事業」は補助の対象から除外されました。この改正をもって、象牙の国際取引再開を図ることや国内の象牙需要を高めること、すなわち象牙取引を促進することを目的とした補助金の交付を停止するよう求める提言1の内容は、概ね実行されたことになります。
一方、残る提言2項目については特段の進展はありませんでした。この状況のもとで、2025年6月11日、東京都政策企画局がJTEF事務局を訪問し、それらの提言に対して口頭による回答がなされました。東京都の象牙取引および象牙産業に関する政策を明確に示した宣言を公表することを求める第2の提言については、東京都が既に行っている取組みの説明がなされるにとどまり、求められた宣言を行う意思がないことが示されました。
狭い例外のみを除いて東京都内の象牙市場を閉鎖するべく、東京都議会によって採択される条例を制定することを求める第3の提言については、都としては適正な象牙取引を推進していくとの発言がされたにとどまり、条例制定の予定があるともないとも明言されませんでした。このことから、有識者会議の提言にもかかわらず、(現時点では)東京都には都内の象牙市場閉鎖のための条例制定を検討する意思はないと判断せざるを得ません。
しかしながら、EIAおよびJTEFは、東京都が引き続き残された提言に対処し、都が設置した象牙取引規制に関する有識者会議による提言の完全実施を実現するよう引き続き求めていきます。
[1] べっ甲・象牙産業等経営安定対策事業費補助金交付要綱(6産労商支第1464号 令和6年10月15日)
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