ブログ:東京都は、象牙産業に的外れな補助金交付を続けている
https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2024/08/tokyo-tower-1007x1024.jpg 1007 1024 Japan Tiger Elephant Organization Japan Tiger Elephant Organization https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2024/08/tokyo-tower-1007x1024.jpg東京都は、東京における象牙取引の改革を約束する一方で、主要な象牙業界団体へ補助金を交付して支援してきた。昨年、Environmental Investigation Agency(環境調査エージェンシー:EIA)とトラ・ゾウ保護基金(JTEF)は、東京都による象牙産業支援のための補助金に対する社会的関心を喚起した。以来、一部変更は行われたものの、業界の中心的メンバーである醍醐象牙店による最近の詐欺事件の発覚もあり、さらなる是正が必要とされる状況である。
東京都の象牙補助金およびそれに対する我々の提言
1994年に東京都が象牙産業への補助金を開始した当初の目的は、商業目的での象牙の国際取引が禁止された際に、いち早く象牙産業の安定を図ることだった。取引業者はもはや象牙の国際的な供給を受けられなくなったからである。そして、つい昨年までは、東京都による補助金は、東京都における象牙製品の需要を高め、象牙の国際取引を解禁するための取組みに資金提供するものとなっていた。このことは、近年の東京都による国内象牙取引改革に向けた取組みと、商業取引のための国内市場を閉鎖するよう求める国際的な勧告と真っ向から矛盾し、それらを台無しにしている。
2024年6月、JTEFとEIAは、東京都に対し、この補助金に関する懸念を表明し、以下のとおり、3点にわたる主要な提言を行った。
1. 象牙の国際取引再開を図ることや国内の象牙工芸品・製品需要を高めること、すなわち象牙取引を促進することを目的とした補助金の交付は、象牙業界に対する補助事業そのものを廃止するか、または補助対象事業を原材料転換支援若しくは職種転換支援に切り替えることにより、ただちに停止すること
2. 矛盾したメッセージを解消し、都内における象牙需要の低減および合法象牙取引の制限に取組む姿勢を明確にするべく、東京都の象牙取引および象牙産業に関する政策を明確に示した宣言を公表すること
3. 有識者会議の提言にしたがい、狭い例外のみを除いて東京都内の象牙市場を閉鎖するべく、東京都議会によって採択される条例を制定すること
補助金への東京都の対処
2024年10月、我々の懸念への対処として行われた措置であることは明らかだが、東京都産業労働局は補助金交付要綱を改正し、補助金交付対象事業を象牙業界団体による「象牙の適正取引」のための経営安定化に向けた取り組みを支援する事業に限定するとともに、象牙の国際取引の再開や象牙製品の需要拡大を目的とした補助金事業を廃止した。
その一方、改正された交付要綱の下で交付された補助金の目的は、現在21社で構成されている東京象牙美術工芸協同組合加盟の組合員のみに、「登録手数料」の負担額を支給するものとされた(国の法律は、象牙販売を行う業者に対して事業登録を維持すること、そのために5年ごとに登録手数料を納めることを義務づけている)。
醍醐象牙店による故意の不正行為
2025年6月、醍醐象牙店の役員らが象牙取引に関する不正行為の容疑で逮捕された。同象牙店と、主要な役割を演じた役員は、象牙の販売を禁止しているインターネットオークションのプラットフォームで、象牙をマンモスの象牙と偽って広告し、販売したとして起訴された。8月には罪を認めている。
EIAとJTEFは、2016年に日本の象牙の登録制度に関する最初の調査以来、醍醐象牙店に注目してきた。2022年には、JTEFが報告書を発表し、Yahoo!オークションが象牙の販売を禁止した後も、醍醐象牙店がそこで積極的に象牙を販売していたことを示す証拠を提示し、醍醐象牙店による不正な販売疑惑に対する直接的な注意喚起を行った。しかも、醍醐象牙店で販売された象牙は、中国への違法な象牙輸出にも関係していた。日本からの象牙密輸の罪で中国において有罪判決を受けた被告人の中に、醍醐象牙店から象牙を入手していた者がいたことがJTEFの報告書で暴露されたのである。
公判廷では、醍醐象牙店は、JTEFから不正な販売について注意喚起がなされ、その後LINEヤフーからも措置がとられたにもかかわらず、それを意図的に潜り抜けて象牙販売を行っていたことも明らかにされた。
醍醐象牙店事件を踏まえた、東京都に対する新たな意見書
補助金交付要綱の改正とそれに基づく補助金交付後に醍醐象牙店の役員らが逮捕されたことを受け、EIAとJTEFは、2025年7月、東京都に対し、改正された補助金交付要綱の運用と、象牙の東京都伝統工芸品への指定見直しに関して提言を行う意見書を提出した。
意見書では、既に述べた点を踏まえ、東京都に対し、東京象牙美術工芸協同組合のいかなる事業に対しても、本補助金の交付を終了すべきであると提言した。さらに、組合員による不正行為と、組合による監督・指導の不備に鑑み、最近交付された補助金は取り消され、交付された補助金は都に返還されるよう求めている。醍醐象牙店事件は、これらの提言が現実の問題に直結していることを具体的に示している。つまり、象牙組合員である醍醐象牙店は、「適切な象牙取引」への従事をおよそ怠っていたのであり、公の支援など受けるべき立場になかった。今回受益者となった者らは、東京象牙組合の組合員というだけの理由で、集団的に補助金の利益に浴しており、それ以上の選定に当たっての評価は行われていないのであるから、支払いを受けた全員がこれを返還すべきなのである。東京都は、10月、醍醐象牙店による「法令違反が確認されたため」として、同象牙店に交付された分の限りで、補助金を一部取り消した。
さらに東京都は、東京の象牙産業のための補助事業を全廃するか、象牙の代替加工用原材料への転換を図る取組みを補助するにとどめるべきである。そうすることで、東京都は、日本の象牙取引の将来的な終焉へと政策的な転換を図ることを視野に入れている、との明確な意志を日本政府に示すことができる。
加えて、東京都の象牙製品に対する管理をさらに促進するため、我々は東京都が、象牙工芸品(「江戸象牙」)の東京都伝統工芸品への指定を取り止めるよう提言した。文献によれば、「根付」を含め、象牙製が典型的と言える一定の工芸品においても、その原材料が必ずしも象牙に限定されていたわけではなく、多様な原材料が歴史的に用いられてきたからである。加工用原材料を象牙のみに限定するような伝統工芸品の指定は取り止め、上記のような工芸品が東京都伝統工芸品に指定されるべきなのであれば、特に素材の点で指定の枠組みを再考すべきである。
象牙市場閉鎖の必要性
2024年に東京都に提示された他のより全般にわたる提言については、進展が見られない。象牙取引及び東京における象牙産業に関する東京都の政策を明確にする公式声明の発表に関する提言については、東京都の担当者は、既に実施している取組みについて説明するのみであり、追加の声明は発表しない意向を示している。
最後の勧告、すなわち、東京の象牙市場を閉鎖するための法的措置の検討を含む有識者会議の提言に沿った行動については、都の担当者は、東京都は適切な象牙取引を促進することとしていると述べている。現時点で、条例などの法的措置の検討が予定されていないことは明らかである。
国レベルでみると、現在、日本政府は、種の保存法の法定見直しの一環として、象牙取引に関する規制の検討を行っている。我々は、東京都知事と東京都に対し、象牙取引に関する厳格な法規制に向けた努力を国に促すことを含め、有識者会議会の提言を完全に実施するよう引き続き働きかける。
市場の閉鎖は、ゾウの保護に向けた国際的な取り組みを支援し、法執行を合理化・簡素化し、日本国内における象牙需要をさらに減少させることにつながる。東京都は、有識者会議が提言しているように、関係省庁と連携しつつ、市場閉鎖の検討を含む国レベルでの対策を支援すべきである。東京都は、国際的な責任を負うリーダーとして、日本の首都として、そして象牙取引の中心地として、この問題について、いっそう指導力を発揮しなければならない。



